6 唖然とする望美ちゃんを前に、胸が痛まないといったら嘘だった。 望美ちゃんの味方にはなれない、そう言い切っても私は望美ちゃんを大切に思っているし、大好きな友達であることには変わりない。 (でも、どちらもは選べない) 望美ちゃんと弁慶さん。言わずもがな、好きの方向性は違う。どちらが一番とか、順位付けをする前に土俵がまず異なる。 (どちらを選ぶのが、正解なのだろう) どちらなら、私は後悔せずに済むのだろうか。そう悩んだ時に目に入ったのは、多くの人に慕われ、囲まれる望美ちゃんの姿だった。 望美ちゃんの周りには、彼女を守り、大切にしてくれる人がたくさん居る。八葉も、朔ちゃんも、白龍も。常にそうやって人が集い、だからこそ彼女は皆と協力し、力を発揮している。 (では…弁慶さんは?) 思い至ったら、居ても立ってもいられなくなった。弁慶さんにも仲間や、家族は居る。でも彼は果たして――それら大切な人に自分の悩みを、業を打ち明けるだろうか。少しでも彼が荷物を減らし、共に分かち合おうとできる人が居るだろうか。 (弁慶さんはきっと、全てひとりで持って行く) 熊野で弁慶さんの告白を聞いて、私はそれを確信した。そして同時に気付いたのだ。全てを私に話してくれた――それは本当に凄いことだ。 平家寝返りの計画を本格的に教えてもらった時、決めた。 私は弁慶さんについていく。全てを託し、運命を共にすると。 私なら連れて行ってもらえる。最後まで、手伝わせてもらえる。彼もそれを私に望んでくれている。 それに気付いてしまえば、それ以外を考えることなど出来ない。 これは、私にしかできないことなのだ。私にのみ与えられた使命だと、思ったのだ。 そしてもう既に…この人の為なら何でもできると、私は信じている。恋しく、焦がれて、その孤独な背中に寄り添うためならば何でもできると。 (これは恋ではない。恋なんて、綺麗なものではない) こんな覚悟が愛だというのならば、ひどく歪んでいる。分かっているけれども、進み始めた針を元に戻すことは不可能だった。 彼の為ならば、なんでもする。 たくさんの人を傷つけても――彼の悲願を叶えるためならば。 私はもう、決めた。 130909 |