あかりと弁慶の仲は、熊野で過ごした数日を境に急激に縮まったように見えた。例の、神子一行と行動を別にした時である。
それまでは恋人と言いながらもどこか他人行儀で、好き合っているというよりも恋人を無理に演じているように感じることさえあった。そしてそれは特に、弁慶の方に見られることだった。

だが怪異を解決し、遂に熊野本宮へ向かうとなった時から。弁慶はあかりを、明らかに他より特別扱いするようになったのだ。

まず距離が近い。頻繁に二人の時間を取るし、出来うる限りで手も繋ぐ。弁慶の視線の先にはだいたいあかりが居て、あかりはそれに気づくと恥ずかしそうに頬を染めた。


「僕の可愛いあかり、あまり将臣くんと親しくしないでくださいね。妬いちゃいそうですから」


そんな、とんでもなく甘い言葉すら堂々と吐いてみせるのである。今まではあかりに、突き放すような冷たい態度を取っていた癖にだ。

望美はこれを、喜んだ。二人きりの時間を過ごすことで、ようやく本当に想いが通じ合ったのだと。
今までは、あかりが弁慶を好きな気持ちが、一方的に強いように見えていた。でも今は同等か・・・それ以上に、弁慶があかりを意識している。朔も同じように感じたのか、ほっとした様子だ。朔は真意の見えない弁慶の態度故に、あかりが彼に惹かれているのを心配していたから余計安堵したのだろう。

このまま二人が幸せであればいい。
それが心からの願いだった。しかし望美は、何故か彼らの姿に少しだけ不安な気持ちになった。


あかりは前よりもより、弁慶の仕事に関わるようになっている。
今までのような雑用ではない。軍師としての、戦いの根幹を担う重要な仕事である。





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