当初に奇襲を予定していたその場所の、崖下に配置された兵の数を聞いてぞっとした。ひやりとした背筋に、彼女を信じて正解だったと思わざるを得なかった。

望美ちゃんの意見から、もう一度一ノ谷へ偵察を走らせたのだ。すると、まるで私たちがそこを攻めると知っていたかのような、万全な防備体制が敷かれていた。
最初は望美ちゃんの“勘”を疑っていた弁慶さんや九郎さんも、これには驚き顔だった。


「もう少し先に、手薄な場所があるそうです。そこから奇襲します」


結局、私たちが選んだのはそこから少し離れた別の崖である。こちらは元の“鵯越え”の場所よりも、もう少し険しい急斜面だった。
流石にそこから来るとは思わなかったのだろう。現れた源氏軍に平家軍はうろたえ、陣は乱れた。
生田の方からは景時さん率いる源氏軍の本体が攻めている。私たちも平家の武将、そして放たれた怨霊と戦いながら生田を目指す。双方から挟み撃ちをされた形となった平家は、次々と屋形船に乗り、されに西へと落ちていった。
こうして私たち、源氏の勝利でこの一の谷の戦いは幕を閉じたのだった。


景時さんによる生田攻め、九郎さんによる奇襲、船で落ち延びる平家。結果だけ見れば、私の知る“一の谷の戦い”と同じもの。だけれど、その限りでないことは、自身の経験から明らかだ。

ずっと喉の奥に、小骨のように突き刺さった不快感に首を傾げる。
その正体は、隣に立つ弁慶さんの言葉により、はっきりとした形になる。


「この作戦は、還内府の指示だったようですよ」






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