6 はじめこそ、異世界人という特異さに利用価値を見出していたに過ぎなかった。怯える彼女に苛つき、ストレスの捌け口にちょうど良いとさえ思った。 明確に意識し出したのは、神子が合流してからだ。その頃から、あかりの奇妙な在り方に惹かれだした。 「でも残念ながら、僕は彼女に相応しいような綺麗な人ではない。僕の身体は血と怨恨にまみれている」 もしあかりに弁慶と同等のずるさがあったのなら、ここまで拗れたりはしなかったろう。そして、これほど彼女を欲しもしなかたと思う。 自覚している。捻くれた自身は、自分にない無垢さを持つ彼女に惹かれているのだ。 「一度、望んだら欲しくなる。手放したくなくなる」 一途な恋心を傷つけ、縛り付け、汚したくなる。弁慶の、綺麗とは言えない内面を突きつけて、それでも好いてくれるのかと問い詰めてしまいたい。 「あかりが欲しい。でも一度枷を外してしまえば、彼女に拒まれても離してやれなくなる。僕には自分を抑えられる自信がない。その資格はないと、わかっているのに」 「・・・そいつは、嬢ちゃんが決めることじゃないのかい」 湛快は、弁慶の葛藤にあっさり答えをだした。そして黙り込んだ弟に、肩をすくめてみせる。 「確かにお前のやろうとしていることに、嬢ちゃんを巻き込むのは、常識的に考えて良くないだろうよ。彼女の幸せを願うなら、手を出すべきじゃない」 「なら、本人に問うまでもないでしょう」 「そうじゃねえ。それは一般論の話だ。彼女を無理やり遠ざけることが彼女にとっての幸せとは、必ずしも言えないってことだよ。わかるだろう。まして、嬢ちゃんは普通の女子じゃない。どうしても、戦からは逃れられる立場じゃないんだろ」 「・・・・・・」 「本人の意思を問うのが一番、だと思うがな」 あまりにも最もらしい兄の助言に、弁慶は苦虫を噛み殺したような、渋い顔をした。 130103 |