「なんだ、あんたか。悪いが野郎は目に入んないんでね」


立ちはだかった弁慶さんに、ヒノエくんは悪態を吐く。どうやら顔見知りらしい。望美ちゃんがそれについて尋ねると、困り顔で誤魔化していた。


「知り合いといいますかねぇ・・・まあ、察してください」


弁慶さんは熊野出身と聞いていたし、昔馴染みなのだろう。


「ふうん・・・。で、その子はあんたのいい人ってわけ」


隠れるように立っていた私は、ヒノエくんに覗き込まれてびくりとした。天真爛漫な彼の態度に、なかなか慣れそうにない。


「違っ」


直球な質問に思わず否定し、弁慶さんの外套から手を離す。場面の展開についていけず、掴んだままだったせいで少し皺になってしまった。
けれども当の弁慶さんは、笑ってそれを訂正する。


「ふふ、何を照れているんですかあかり。その通りなのだから、否定する必要はないでしょう」


お馬鹿さんですね、と頬をつままれた。第三者から見たらさぞ仲睦まじく見えるだろうが、しかし、じゃれるにしては力の過剰に込められた指先に悪意を感じる。言葉にするのなら、余計なことは口にせずただ黙っておけ、だ。


「へえ、珍しいじゃん。余程本気の相手なんだ?」

「僕を気にするより、君自身早く身を固めたらどうですか」

「あんたみたいに切羽詰ってないから、いいんだよ」


軽口を叩き合う二人があまりに親しげなので、一同は唖然としてそれを眺めていた。すると弁慶さんは咳払いをして、私を前へ押し出す。





×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -