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「あかりが将臣くんと、そんな仲良かったなんて知らなかった」

「言ってなかったっけか。一年の時に委員会が同じで…」

「あああ有川!余計な記憶掘り返さないで!!」

「あら。私はあかりの話をもっと聞きたいわ」

「朔ちゃんまで…!」


将臣の言葉を遮り、あかりは喚く。余程話題にされたくないことがあるのか、楽しげに笑う将臣の口を彼女は真っ赤な顔をしながら止めようとしていた。半ば掴みかかるようない勢いだ。けれども、彼らのその様子は実に高校生らしいものである。九郎は賑やかな彼らを少し離れた席で眺めながら、しみじみと呟いた。


「今日のあかりは、なんだか生き生きとしているな」


というよりも、年相応に見えるのだ。あかりは望美と比べ、感情を出すことが少ないように九郎は感じていた。九郎が彼女と行動を共にする事は少ない。だから、あかりについて知ることも多くない。けれど、それを差し引いてもあかりはどこか大人びて見えることが多かった。


「あかりもあんな風に怒ったり騒いだりするんだな。…なんて、当たり前だが」

「あぁ、兄さんが居るからですね。僕や春日先輩は学校は一緒でも、ほとんど関わりはありませんでしたから」


譲は、お茶のお代わりを注ぎながら兄へ視線を送る。


「やはり、気を使わずに済むんでしょう。菅原さん、今までは自分を知る人が全く、居なかったようなものでしょうし」

「そうか。何にせよ、良かったな。あかりも皆に打ち解けることができそうだ」


彼女にそのつもりはないのだろうが、あかりにはどこか、神子や八葉との関わりを避けているようなところがあった。いや、恐れているといった方がいいのかもしれない。彼女自身は、人付き合いが特に苦手なわけではなさそうで、源氏の兵と気軽に話している姿もよく見かける。冗談を言い合うこともあるようだ。けれどこの梶原邸に居る彼女は、強張った表情を浮かべていることが多い。八葉でも神子でもないということに、引け目を感じているのではないかと勘ぐってしまう。


「弁慶。お前はあかりに一番近いだろう?保護者を買って出たのもお前だ。あかりの事、もう少し気にかけてやってもいいんじゃないか?」


同じ世界から来た望美、譲そして将臣を除いてしまうとあかりとの接点を持つ者は弁慶だけである。その他の者、例えば九郎は、あかりと親しくするべきだと思っていても、なかなか話しかける糸口が見つからなかった。弁慶が気を使って間に立ってくれれば一番いいのだが、どういう訳か、弁慶はあかりに少々厳しいようである。

いつものお節介さはどこへ行ったのだ、と九郎が訝しんで友の顔を見れば、弁慶は少し目を伏せて返事を返した。


「…………ええ、そうですね」






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