6 その日梶原邸では、将臣くんとの再会を祝して軽い宴会が催された。私は八葉ではないからと遠慮したのだが、異界の同窓なのだからと望美ちゃんに言われてしまい、ついに断ることができなかった。 私が梶原邸で食事を頂くのは、稀だ。避けているわけではないが、雑用事に奔走しているうちに時間を逃してしまい、源氏兵の皆さんの炊き出しに混ぜてもらうことが多いのである。 「…譲くん、腕上げたね」 だから皿に盛られたご馳走に、驚きを隠せない。どれもが食欲をそそるのは勿論のこと、久しく口にしてない洋食までも並んでいたからだ。それこそ、エビフライからケーキまで。普段は強飯(固いご飯だ)ばかりで白米すら久々なのに。 「あかりは中々、こっちでご飯食べないから。譲くんの料理、美味しいのに」 「…住んでるところが違うと、時間が合わなくて」 答えたけれど、それは言い訳だった。いつも望美ちゃんは私に良くしてくれるし、気にもかけてくれる。とても嬉しいけれど、どこかで甘えられないとも思ってしまい、彼女の親切を素直に受け取れない自分もいるのだ。 そんな風に考えている自分の卑しさがまた申し訳なくて、たまらなく感じるのだが。 「菅原も一緒にいるんじゃないのか?」 私の隣に座っていた将臣くんが、私たちの会話に首を傾ける。首を振ったのは望美ちゃんだ。 「あかりは私たちより先に来てたから、自分でちゃんと生活の手段を確立しててね。弁慶さんの下で働いてるの。私も見習いたいよ」 「ざ、雑用みたいな事、手伝わせてもらってるだけだって」 望美ちゃんがあまりに目をキラキラさせて言うものだから、私は首を振って否定する。本当に、大したことはしていない。神子である彼女に比べたら、尚更。 でも将臣くんは感心したような顔で、笑顔を向けた。 「へぇ、相変わらず菅原はしっかりしてるんだんな。偉い偉い」 そして唐突に、私の頭に手を乗せる。そのままわしゃわしゃとかき乱され、私は慌てて首を竦めた。 「ちょ、ちょっと止めてよっ」 「恥ずかしがんなよ。俺と菅原の仲だろ」 「その誤解を招く言い方やだっ!」 まるで小さな子にするように、頭を撫でられる。恥ずかしくて顔に熱が上がった。助けるように望美ちゃんに視線を向けるが、彼女は楽しそうに笑うばかりである。 110320 |