弁慶さんから逃げ出して、もう3日ほど経つ。私は彼を避けるように行動していた。弁慶さんはそれに気づいていながらも、何も言わない。きっと私の情けない様をみて楽しんでいる、なんて容易に嫌な想像ができてしまうことが悲しい。

(自分の気持ちになんか、気づかなければ良かった)

そうすれば、見透かすような彼の台詞も笑い飛ばせたのに。




「あかり、ちょっとちょっと!」


六条堀川の屋敷を避けるように町中にいた私は、偶然通りかかった梶原邸で望美ちゃんに呼び止められた。


「どうしたの?」

「いいから見て、きっとびっくりするよ!」


悪戯っ子のように笑う望美ちゃんに、朝から元気だなぁと私は誘われるままに門をくぐる。すると、そこには見知らぬ青年がいた。

新しい八葉だろうか。今、望美ちゃんの八葉には九郎さん、譲くん、リズ先生、景時さん、そして弁慶さんの五人がいる。白龍が言うには、時がくれば集まる、らしい。

(そういえば昨日、青龍の気がなんとか、と)

白龍が言っていた気がする。青龍の位置には九郎さんがいるが、それぞれの四神に天地の二人がいるので、もう一人が見つかる前兆だったのか。それではこの青年が、そうなのかもしれない。

譲くんと親しげに話す彼は、髪を肩のあたりまで伸ばしていた。いくらか年上だろうか、なかなかしっかりした体つきで頼りがいがありそうだ。顔も結構……


「将臣くん!連れてきたよ!」


聞き覚えのある名前に、え? と望美ちゃんを振り返る。すると青年はこちらを向き、笑顔を浮かべた。


「久しぶりだな、菅原」


呼ばれてはっとした。この顔、見覚えがある…!


「あ、有川くん!?」


記憶の導くままに呟くと、青年は大きく頷いて私の肩をたたく。
思い出す、記憶の中の有川とは雰囲気が違った。髪も長くないし、こんなに背は高かっただろうか。


「びっくりしたでしょ」


望美ちゃんの声に呆然としたまま頷く。でもそれは確かに、有川将臣だった。


101007




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -