4 弁慶さんから逃げ出して、もう3日ほど経つ。私は彼を避けるように行動していた。弁慶さんはそれに気づいていながらも、何も言わない。きっと私の情けない様をみて楽しんでいる、なんて容易に嫌な想像ができてしまうことが悲しい。 (自分の気持ちになんか、気づかなければ良かった) そうすれば、見透かすような彼の台詞も笑い飛ばせたのに。 「あかり、ちょっとちょっと!」 六条堀川の屋敷を避けるように町中にいた私は、偶然通りかかった梶原邸で望美ちゃんに呼び止められた。 「どうしたの?」 「いいから見て、きっとびっくりするよ!」 悪戯っ子のように笑う望美ちゃんに、朝から元気だなぁと私は誘われるままに門をくぐる。すると、そこには見知らぬ青年がいた。 新しい八葉だろうか。今、望美ちゃんの八葉には九郎さん、譲くん、リズ先生、景時さん、そして弁慶さんの五人がいる。白龍が言うには、時がくれば集まる、らしい。 (そういえば昨日、青龍の気がなんとか、と) 白龍が言っていた気がする。青龍の位置には九郎さんがいるが、それぞれの四神に天地の二人がいるので、もう一人が見つかる前兆だったのか。それではこの青年が、そうなのかもしれない。 譲くんと親しげに話す彼は、髪を肩のあたりまで伸ばしていた。いくらか年上だろうか、なかなかしっかりした体つきで頼りがいがありそうだ。顔も結構…… 「将臣くん!連れてきたよ!」 聞き覚えのある名前に、え? と望美ちゃんを振り返る。すると青年はこちらを向き、笑顔を浮かべた。 「久しぶりだな、菅原」 呼ばれてはっとした。この顔、見覚えがある…! 「あ、有川くん!?」 記憶の導くままに呟くと、青年は大きく頷いて私の肩をたたく。 思い出す、記憶の中の有川とは雰囲気が違った。髪も長くないし、こんなに背は高かっただろうか。 「びっくりしたでしょ」 望美ちゃんの声に呆然としたまま頷く。でもそれは確かに、有川将臣だった。 101007 |