右から九郎さん、有川弟、春日さん、朔さん、長髪の男の子。ずらりと勢揃いした彼らは、揃って私に視線を向けている。


「菅原あかりです」


恐る恐る名乗ると、春日さんと朔はにっこりと笑って手を差し出した。


「私は春日望美!望美でいいよ、あかりでいい?」

「梶原朔よ。何度か顔合わせているけど、自己紹介はまだだったわね。あかり、よろしくね」

「よ、よろしく…!」


この世界に来て同世代の女の子に会ったのは初めてであり、更に言うと暖かく迎え入れてくれたのも初めて。久々に(と言っても一週間足らずだが)感じる温もりに不覚にもじんわりと涙が浮かんでしまう。


「なんだ、初対面なのか。あかりと望美は同じ異世界から来たのかと思ったが」


九郎さんの言葉に、苦笑。初対面ではない、春日さんが私を覚えていないだけで。でもいっそ初対面ということにしておこうかという考えが脳裏を掠めた。他に知り合いいないし、説明する必要はあまりないし。しかし、口を開きかけた私を有川弟がもしかして、と遮った。


「違ったらすみません。あの、菅原先輩ですか?」

「譲くん、知り合い?」

「兄さんが一年の時に何度か話を…って、春日先輩の隣のクラスだったと思いますけど」


まさか、有川弟が私を覚えているとは思わなかった。内心、かなり驚きつつ言葉を返す。


「有川の弟くんだよね。私も覚えてる。その節は有川くんにお世話になりました」


それから、声を潜めて彼を見つめる。


「弟くん、有川くんから何聞いたかわからないけど、その…」

「わかりました。俺の心のうちに閉まっておきます」


それだけで察してくれたようで、彼の返してくれた言葉に胸をなで下ろした。


「あかりって将臣くんと友達なの?」

「友達っていうか、一年の時に委員会が一緒だったから…まぁ、その関係で少しお世話になった、みたいな」


微妙に濁しながらの説明に、望美ちゃんは首を傾げながらも何も追求しないでくれた。間違った説明はしていない。ただ、有川とはひと騒動あったので、あまりそのことを掘り返したくないのである。
気を取り直して、私は九郎さん、朔さんに向き直って話を続けた。


「望美ちゃんとは話したこと無かったけど、同じ学校の隣のクラスだったんです」

「くらす…?」

「九郎さん、組のことです。でも私、全然気付かなかった。あかり、ごめん…」

「いいよ全然。私が一方的に望美ちゃんを知ってただけだから」


望美ちゃんは申し訳なさそうに眉尻を下げていたけれど、すぐに私の手を取って元気よく声を張り上げた。


「せっかく同じ境遇なんだもん!これから沢山仲良くしようねっ!」


前から元気な子だと思っていたが、思っていたよりも明るくて良い子みたいだ。何を言っても全然嫌みな感じがなくて、笑顔が似合って。確かに、穢れなき白龍の神子にぴったり。


「そういえば、驚かなかったんだね。他にも異世界から来た人がいるなんて思わないでしょ」


私より後に来たのだし、もっと驚かれるかと思ったのに彼女たちの反応は意外だった。すると望美ちゃんは何でもないように、あぁ、と種を明かしてくれた。


「弁慶さんが教えてくれたの。私たちの先例がいるからって」





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