通された客間のような部屋には、先客がいた。オレンジ色の髪を靡かせた大将、九郎さんと、中国っぽい服装をしたかわいらしい男の子だ。朔さんに(若干強引に)背を押されて部屋に入れられた私を見て、中にいた二人は目を丸くした。


「あかり?どうした、こんな所で」

「ああああの、し、失礼します…」

「弁慶殿に用があるそうなんです。少し待ってもらおうと思って、いいでしょう、九郎殿」


朔さんの言葉に九郎さんはきょとんとした顔で、私と朔さんの顔を見比べた。私はというと、あまりの急展開にどもりまくりである。九郎さんと顔を合わせるのも久々だ。


「私は構わない。…むしろ、何故早くこちらに来ないのかと思っていたところだ」


九郎さんの視線に、私は居心地があまりよくない。というか、気まずい。九郎さんは私が異世界人だと知っている。神子様が異世界から来たと聞いたのだろう。春日さんが来る前に実は、九郎さんと話していた。
――龍神の神子は異世界から来るらしい、だからその人を見つけたら帰れるのではないか、と。


「あかりも異世界から来たのだろう。望美や譲と、話したくはないのか」


九郎さんは私が、元居た世界に帰りたいのだと思っているようだ。普通はそう、思うのかもしれない。多分その気持ちも、ある。

(でも、今帰るのはなぁ…)

正直な話、少し私はこの世界に興味を持ち始めていた。この平安末期によく似た世界に。
それはさておき、私が春日さんに会おうとしなかったのは、気まずさからであった。片や神子様、片や時空単位の迷子。


「…なんというか、タイミングを失ったというか…」

「…たいみんぐ…?」


九郎さんは横文字に首を傾げる。この世界では横文字も通じないし、まだ様々な技術もあまり発達していない。怨霊云々を抜いたら本当に平安末期そのものだ。


「機会、という意味ですよ」


私が口を開く前に、背後から助け舟。


「おいしいお萩ができたんです。先輩も呼んで、お茶にしましょう」


ゆっくり振り返ると、背の高い眼鏡の――有川弟が、お盆を持って部屋に入ってきたところだった。





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