今の状況は、一体どこから説明したら良いだろう。

端的に結果だけ述べてしまうと、弁慶さんの計画は全て目論見通りに達成された。そこに行き着くまでにちょっとした苦労や苦悩、番狂わせが無かったといえば嘘になるが、その点は大方想定内だった。

今私は、弁慶さんと寄り添いその勝利を噛み締めている。
そう、勝利だ。私たちは勝利した。その証拠に、周囲に溢れていた怨霊たちはものの数分で皆消え去り、ついでに平家の兵たちも逃げていった。


――じわり、熱を持つ腹部に手を当てる。弁慶さんもそれに気づき少しだけ悲しげに笑って私の身体を支えてくれた。その額は汗ばんでいる。


けれども、いきなりこの結末を説明したところで理解はいただけないと思う。
全ての成り行きは、私が付けていた軍記――というのもおこがましい日記のなりそこない――に綴ったものの、やはりこの場では補足が必要だと思う。
少しだけ、そう、船が目的地にたどり着いた頃まで一旦遡ろう。






源氏を裏切って平家に寝返った私たちは、清盛殿へ差し出す贄としての白龍の神子、望美ちゃんを捕らえたまま平家の船へと身を寄せていた。
長い船旅。その中で季節は巡った。冬が終わり、春が来た。潮風の冷たさが消えた丁度その頃、ようやく平家の船団は目的地に付いた。

その地とは、厳島である。私の元の世界でも水に浮かぶ社として有名な、厳島神社がある地だ。
厳島神社は平家の現在の本拠地であるようで、清盛殿が待つ場所でもあった。後から知ったことだが、平家一門の怨霊化はこの地においてされているらしい。当の清盛殿も、ここで復活したと言っていた。

望美ちゃんの監視は、厳島に到着したと同時に厳重になり、彼女の身柄は私たちの手を離れた。私は望美ちゃんと語ったあの日から、彼女と顔を合わせていない。それは弁慶さんも同じだったようで、私たちは結局、彼女と目すら合わせないままに彼女と別れた。
望美ちゃんは、山の中の洞窟を利用した牢獄へと入れたらしい。待遇は良くないとはいえ、実際、現在のこの地においては最も安全な場所である。

厳島には、今までのどの戦場よりも多くの怨霊が居た。歩いたり見張ったり、平家の兵に混じって清盛殿の指示に従っているのである。
その光景は、異様としかいいようが無かった。まるで、この世とあの世の境目のような光景だ。平家軍の中にも気味悪がる様子を見せた人も居たものの、大体が許容しており、ごく自然に怨霊たちと共存しているのだった。





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