きみの世界が美しくあるようにと願う 「じゃあ、タイムワープをはじめるよ!」 ずらりと装置の前に並ぶのは、10年前からやってきた、綱吉君たちだ。私たちはそれに向かい合うようにして、彼らを見送るために並んでいた。 「本当に、ありがとう」 綱吉君に向けた正ちゃんのその言葉に、私たちはそれぞれきっと、思うところがあったのだと思う。皆、想い想いの表情で綱吉君たちを見送る。 本当に、色々なことがあった。つらいことも、悲しいことも、それでも嬉しいことだって。 でも結果、皆、救われた。すべて綱吉君たちがもたらしてくれたことだ。これからどうなるかわからない。けれども、彼らが命がけでもたらしてくれたものを、私たちは守っていかなければならないだろう。 「助手子、こわくないか?」 ふと、耳元でスパナが囁く。 私は彼を見上げて、笑って答える。 「怖いよ。だからね、スパナ」 絡ませた指先に、想いを乗せる。きつくきつく、握りしめる。決して、離れないように。 「ずっと、手を離さないでね」 「…うん」 大丈夫。この指先があるから、私は未来を信じていける。 「タイムワープスタート!!」 そして、正ちゃんのかけ声と共に、装置が作動した。 空間を凝縮すうような音が響きわたりそして――大きな音と共に、彼らが光に包まれる。 その光を見つめながら、私は祈る。 この先の未来に向けた願いは、ただひとつだけ。 きみの世界が 美しくあるようにと願う どうかどの世界でも、君が幸せでありますように。 150708/完結 |