説得


「メカが場数を踏んでいるのは、知っている。でもスパナとの方が、戦いやすい。今回はこれで行かせてもらう」

「そこを何とか、できませんか。確かにスパナの方が、互いに手の内を知っててやりやすいでしょうけど。でも、きっと俺の方が今回は適任だ」

「メカ、ちょっと何言って――」

「姉貴にはわからないだろうが、この方がいいに決まってるんだ。今は黙ってて」


つい、挟みかけた口は素気無く跳ねのけられる。その剣幕はあまりにも鋭く、それ以上言葉を続けることができない。
そのやりとりに、興味を示したのは白蘭さんだ。


「あれ、もしかして君は”メカニカルメカニック”のメカくん?」


白蘭さんは、私とメカを見比べて笑う。


「噂は聞いているよ。ボンゴレ所属の正体不明の技術者。以前はヴァリア―に居たって聞いていたけど――姉貴ってことは君、助手子ちゃんの弟だったんだ。へえ、なるほどね。君たちは本当に、面白い」


その言葉に、私はますます口を出しづらくなった。白蘭さんでさえ、弟の異名を知っている。私はこの弟の事を、たぶん誰よりも知らないのだ。

メカは、ただ考えなしに発言しているようではなかった。何か意図するものがあるらしい。それを感じとってか、正ちゃんは考えるように顎に手を掛ける。皆、正ちゃんの動向を窺っていた。

けれども正ちゃんが答えを出す前に、私の後ろから厳しく否定の声があがった。


「――だめだ、メカ。誰が許しても、僕は君を戦いに出すことを許せない。正一さん、ツナ兄、やはり先程の編成で決定してください」

「フゥ太!!!勝手に止めてんじゃねえ!!!」

「勝手なのは君だろ!」


急に、フゥ太くんが大声を上げる。彼が怒鳴るのは、珍しい。それは長い付き合いのあるメカもそうだったようで、言い返されて目を丸くした。


「メカがボスと約束したように、僕もボスと約束しているんだ。君を戦場には出さない――理由は、メカが一番分かってる筈だ」


ボスは、きっと綱吉君を指す。けれどもそれは今ここに居る彼ではない。元々この時代に居た、大人の綱吉君。
彼と弟の間に、フゥ太くんとの間に何があったのかはわからない。でもそれはきっと、この状況を見越した大切なことなのだろう。


「……クソッ!!」


ぐっと奥歯を噛みしめ、悔しげに漏れた悪態。しかしそれ以上、メカは我儘をいうつもりはないようだった。口を閉じたメカを見て、リボーンさんは先を促した。


「なんだかよく分からねーが、結局、最初の入江の案で良いみてーだな」


繋いだ手が強まる。
見上げると、スパナは私を見下ろしていた。


「助手子、ウチ行ってくる」


それを合図に、解かれる指。


「…行ってらっしゃい、気を付けてね」

「不安そうな顔するな。大丈夫、絶対に帰ってくるよ」

「ん。信じてる」


落とされた、キスひとつ。

それでも、心を渦巻く不安は消えない。でも大丈夫。私は信じている。スパナを信じて待っている。それしかできないけれど、それを出来るのは自分だけだと自負している。
そうやって自分に言い聞かせて、不安を誤魔化した。


141207



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -