ご期待に添えたいです 「わあ、かっこいい!」 なんだかんだいっても、やはり見た目というものは大事なものなのだ。決戦の朝。ビシリと決まったスーツ姿の皆を前に、私は思わず感嘆の声を上げた。 この姿は、ボンゴレの正装なのだという。正ちゃんは白蘭さんを倒すことが世界を救うことだからと言い、リボーンさんは元の世界へ帰る為に奴を倒せと皆を鼓舞する。どちらにせよ、命がけの戦いだ。負けられない、大切な戦いだ。それが今にも始まろうとしているのだ。気合いは十分だった。 私はボンゴレの起源どころか、ミルフィオーレのことも、マフィア界のこと自体もよくわかっていない。この場にいる誰よりも、本来はこの場にはそぐわない人間かもしれない。だけれど、今この場にいるのは事実で。 (頑張らなくちゃ、だめだよね) 出来ることは少ない。それでも精一杯、やる。覚悟はとうの昔に決めていた。今更、怯えて逃げることなど、考えもしないことである。 「それにしても、この格好…」 覚悟云々はさておき。”正装”は私たち技術屋と女の子たち――いわゆる非戦闘員にも用意されていた。リボーンさんに手渡されたそれに腕を通した私だけれど、改めて自分の格好に違和感を覚える。 綱吉くんたちのスーツとは、デザインが異なっている。イメージ的には学校の制服のようなブレザータイプだった。そしてなによりも…プリーツのミニスカート。 「私も、ビアンキさんみたいにズボンで良かったのに…!」 高校を卒業してから、制服なんて一度も着ていない。特にマフィアになってからは、殆ど作業着だったのだ。いきなりこんな可愛らしい制服、気恥ずかしくてたまらなかった。 ちなみに京子ちゃんやハルちゃんも、私と同じデザインのものだ。二人とも可愛らしく着こなしている。ビアンキさんは、女性ながらもズボンタイプのスーツである。大人女子のキリッとした感じが素敵だ。私も一応成人しているし、ビアンキさんタイプでも良かったのになとちょっと思ってしまう。こんな可愛らしい格好似合わないんじゃないかなと、落ち付かないのである。 「助手子、良く似合ってる。可愛い」 「そ、そんなお世辞はいいって」 「いやいや、本当によく似合ってるよ助手子ちゃん」 落ち付かずにそわそわしていると、スパナと正ちゃんが言ってくれた。それでも、ううんと苦笑いする私を見て、スパナがはにかみ笑いを浮かべる。 「? スパナどうしたの」 「うん、なんか…」 スパナは、ちょっと照れたように視線をさ迷わせる。私が彼の顔を見上げると、ぎゅっと抱きよせられた。 「助手子とおそろいなんて、まるで同級生になったみたいだ。嬉しい」 「……!」 その囁きに、胸がきゅーんと高鳴る。こんな可愛いことをいう恋人に、ドキドキしない方がおかしいというものである。彼と恋仲になってからもう随分経つと言うのに、私は相変わらずどきどきさせられっぱなしだ。 急激に上がった体温に、言葉も出ずにされるがままに抱かれていると、後ろから可愛らしいひそひそ声。 「見てください京子ちゃん!助手子さんとスパナさんラブラブですっ!」 「本当だ〜!羨ましい」 「大人の恋です〜!」 「すごーい!」 …なんだか、この女の子二人には妙な認識をされている気がする。今朝のこともある手前、色々否定しきれない部分もあるけれども。 「あはは、本当に君たちは仲睦まじいね。妬く気もおきないよ」 「当たり前だ。ウチと助手子はずっと一緒だからな」 正ちゃんの言葉に、スパナは私を離すと当然のように言ってのけた。ああ、ずるい。こんなカッコいいことを言われて、私は既に茹で蛸のように真っ赤だ。それでも、私も同じだよという気持ちを込めて、ぎゅっと彼の手を握る。 「さあ行こう、チョイスへ」 大切な人を守るためにも。 私たちは、戦う。 140728 |