ちょっとばかりは大目に見てね


京子ちゃん、ハルちゃんのボイコット事件は、綱吉くんが彼女たちに事情を話したことで決着がついたらしい。二人はとてもショックを受けていたけど、綱吉くんの話を受け入れた。
知りたがっていたとはいえ、きっと彼女たちの想像以上だっただろう。それほど、私たちの今の現状は厳しい。二人にとっては、酷な話だ。でも結果的には、話しておいて良かったと私は思う。


「大変なことになりましたね…」


食堂に集まったのは、ビアンキさんにリボーンさん、ディーノさん、フゥ太くん、メカ、私のいわゆる大人組だった。

つい先刻のことだ。突然電波ジャックを受け、白蘭さんからの通信が入ったのである。私が白蘭さんと顔を合わせるのは、イタリアからメローネ基地へ向かって以来のことだった。その前から忙しそうにする彼とは気軽には会えなくなってはいたけれど、でも、私がメローネ基地へと戻るあの日、気紛れに彼は私を見送りに来た。その時以来。

今回白蘭さんは、業務連絡と言った。そこで明らかにされたのは、戦いの日の集合場所そこへ”全員で来い”と言ったのだ。そう――京子ちゃんやハルちゃんも含めた、全員で。その報告は私たちに衝撃をもたらし、綱吉くんたちはさらなる修行へと勇んで向かった。そして残ったのが私たちなのだ。


「お前に聞いておかねーとならないことがある」


ゆっくりと、口を開いたのはリボーンさんである。言葉を向けられたのは、私。彼の丸い目を見返す。


「白蘭さんのことですね」


私が頷いて呟くと、リボーンさんは口角を上げる。笑っているけれど、彼のその動作が少し緊張に強張っているように見えた。
そう、予想外のことが起きたのだ。あの通信の最後、ふと白蘭さんは私へと視線を向けた。そして呟いた。

――『スパナくんはともかく、助手子チャンがそっちに行っちゃったのは、ちょっと残念だなぁ』と。

もちろん私は、技術者といってもスパナの付属品みたいなもの。私一人では、一般隊士にも劣るだろう。だというのに、腹心の正ちゃんですら容易に斬り捨てた彼がなぜ私なんかを気にするのか。私自身、思ってもみないことだった。

でも、きっとボンゴレの皆は疑った。私と白蘭さんの間に何か特別な関係があるのではないのかと。それは、ありない。けれど、もし私に特別な何かがあるなら、心当たりはひとつ。


「その話をする前にちょっと、説明しておかなければならないことがあるんです」


私は、コップに注がれた紅茶を一口、飲む。皆が私の一挙一動に、注目しているのがわかった。


「私がミルフィオーレでしていた研究の話…いえ、ちがいますね」


カップの底がテーブルに当たり、カツンと音を立てる。そして、私は話し出す。ずっと話題に出すのはタブーとされていた話を。私にさえ教えてもらえなかった、私の話を。


「何故、ミルフィオーレに入ることになったか。その原因の話です」


140402



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