その生を謳歌せよ


京子ちゃんとハルちゃんのボイコットは、未だに続いている。それに関して私たち大人組は、ただ傍観に徹していた。こればかりは本人たちに解決してもらうしかないと、判断したのだ。


「かなり苦戦しているようだけどね」


ビアンキさんの言葉に、昼間に見た皆の様子を思い出し苦笑する。
綱吉くんたちは上手くいかない修行に加え、慣れない家事に悪戦苦闘しているようだった。見ているこっちがハラハラさせられ、手伝いを申し出たくなるのを我慢するのが大変だった。

京子ちゃんとハルちゃんもその様子が気になるようで、落ちつきなくそわそわしていた。
それでもギブアップしない綱吉くんたちに、彼女たちの方が先に参ってしまいそうな気配もある。

ところで、と私に話が振られたのはそんな時だった。


「助手子さんは、私たちのボイコットに反対はしないんですか?」


ボンゴレアジトの大浴場。ビアンキさんが、綱吉くんたちが降参しない理由について大人の意見を述べたすぐ後だった。

女子は大抵皆、同じような時間に入浴をしているのだ。特に決まりはないのだが、一緒にどうかと誘われて私にも断る理由はなかった。そこでの会話の流れでの問いである。

問われた私は、面食らった。そんなことを聞かれるだなんて、思っていなかったのだ。しかも、ビアンキさんの有難いお話の後に。でも真剣に答えなければいけないと悟る。二人は、真剣に尋ねているのだから。
私はゆっくりと息を吐く。それから、記憶を掘り起こすようにして口を開いた。


「私もね、似たようなことがあったから」

「え…それって、もしかして恋人さんとのことですか?」

「そうよ。私も、最初は巻き込まれたの。意味もわからず仕方なくマフィアになって――でも、途中で逃げろって背中を押されたの」


今でも、あの時のことは鮮明に覚えている。イタリア滞在中のことだ。ある日突然、スパナは私を追い出そうとした。マフィアから足を洗えと。


「手を汚すのは自分だけでいい、なんて言っちゃって。自分にも、正面切ってはできないくせに」


私の場合は白蘭さんが関わっていた。だから、余計スパナは焦ったらしい。自分の一言で私を無理やり助手にしてしまった、この先はもう戻れなくなる、と。


「勝手に決めないで、私は自分の意思でここにいるんだからって泣き喚いて…結局私の粘り勝ちだったんだけどね」


その際、思いきりスパナの頬を叩いてしまったことも、良い思い出である。相当痛かったらしく、しばらく手形は残ってしまって申し訳なかったけども。


「どうして助手子さんは、言われた通りにしなかったんですか?」

「私にとって彼が、かけがえの無い存在だから、かな。待たされたり、巻き込まれたりしても良い。それでもずっと彼の隣に居よう、居れるようにしようって決めたの」


――あんたをマフィアにしたくなかった、でもやっぱりあんたに助手してもらいたい。

そう言われて、ただひたすらに嬉しかった。私が助けになれるのならば、これ以上はないと思った。思えばあの時からもう、スパナを唯一の人と直感していたのかもしれない。

大切な人を守りたい気持ちも、手放したくない気持ちも、力になりたい気持ちも、側に居たい気持ちも。きっと全部本物。綱吉くんたちも女の子たちも、どっちも間違ってはいない。
だからこそ、全力でお互いにぶつかるべきだ。納得しないまま進めるほど、この世界は甘くはないのだから。後悔は、産んではいけない。


「だからね、二人にも後悔のないよう、ぶつかって欲しいんだ」


京子ちゃんとハルちゃんは、難しい顔で俯いた。


140304



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