きっとそうであればいい


「…助手子さん、怒りますか?メカは、僕がマフィアに引きこんだも同然だ。言い訳はしません」


弟が席を外した隙を見て、切り出したのはフゥ太くんだった。
先程の和やかさから打って変わった温度差に、身が引き締まる。同時に、深刻な様子の彼の顔に私は切ない気持ちになった。
きっと彼は今まで、私に会う度、幾度となくそれを思っていたのだろう。心の中でずっと悔いて、頭を下げていたのだろう。フゥ太くんは本当に優しい人だから。私のたった一人の弟をマフィアに引きこんだと、それは自分の責任だと、思い病んでいたのだろう。


「しない、よ。だって、メカが決めたことだもの。私が口を出すことじゃないし、フゥ太くんの責任でもない」

「でもきっと…僕がいなかったらメカはマフィアにならなかった」

「そんなの、わからないよ。フゥ太くんと親しくなくても、正ちゃんに影響されてミルフィオーレに入っていたかもしれないし」


未来は、誰にもわからないのだ。ましてや起こり得たかもしれないIFなんて、想像も難しい。
それでもフゥ太くんは、納得できないように目を伏せる。


「…それに、フゥ太くんだって人のこと言えないでしょ。貴方を責めたら私は、私の大切な人も責めなければいけなくなる。私だってあの時スパナに出会わなければ、きっとマフィアにはならなかった」


思えば、それはどれほどの奇跡だったのだろう。この広い世界で、多分あり得ないくらいの確率で、私たちは出会ったのだから。
それはフゥ太くんとメカも同じこと。決して、後悔なんてするものじゃない。


「人の幸せはそれぞれだから、家族であろうと他人に口を出す権利なんてない。友達でも恋人でもそれは同じ。きっとメカは幸せだよ。フゥ太くんは…違う?」

「…僕は幸せ、です。メカが居て良かったと、何度も思った。巻き込んで申し訳ないと思うよりも、たくさん」


フゥ太くんの言葉に、ほっと息を吐く。


「本当に、良かった。メカが出会ったのが、フゥ太くんやボンゴレで。マフィアでも、こんなにあったかい人たちの中に居てくれて、良かった」

「助手子さんだって、これからはボンゴレですよ」


顔を上げたフゥ太くんは、柔らかな笑みを浮かべる。そして、ちょっと悔しそうに、呟くのだった。


「僕も、助手子さんが出会ったのがスパナだったから今がある…それに感謝しています。スパナは、助手子さんを守っていてくれていたんだから。悔しいけど、僕ではスパナには敵わない」



140117



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