ご存知の通りメロメロです


二人の少女のことを、私は知っていた。笹川京子ちゃんと三浦ハルちゃん。ボンゴレのメンバーではないようだけれど、幹部たちと深い関係があるらしい。

随分前に、弟が彼女たちと話しているところにでくわしたことがあった。勿論二人共、私よりも年上の女性。弟は「上司の大切な人」と言っていたが、今から思えば多分、綱吉くんのことだろう。

しかし今の二人は、この時代の二人ではない。綱吉くん同様10年前の少女だ。私よりも弟よりも年下。私はそんな彼女たちに両側から手を繋がれ、どうしたものかと内心で首を捻っている。


「助手子、あなたその作業着しか今ないのでしょう。まずは服が必要ね」


ビアンキさんの言葉に、私は今更ながら作業着で街をうろついている現状を恥ずかしく感じる。だって仕方がない。私物はほとんど、メローネ基地ごと白蘭さんに持って行かれてしまった。

ところで、私の迎えは基地内の女性たちが総出でしてくれたらしい。京子ちゃんハルちゃんに連れられて行った先に、ビアンキさん、クロームちゃん、イーピンちゃんも居たのである。
ちなみに私が顔を知っていたのはビアンキさんだけで、それもマフィアの資料でのこと。けれども皆の方はどこから情報を得たのか、私について聞き及んでいたらしい。
簡単な自己紹介の後は、ビアンキさんの一言で行き先は決まった。





そして数十分後。
私はややぐったりとしながらも、依然として女の子たちに手を繋がれている。


「助手子さん、ツナギも似合っていたけれど、やっぱり可愛い服がいいね!」

「女の子はお洒落しなきゃです!あのフリルのスカートも捨てがたかったですよね〜」

「次はちょっと大人っぽいのも着てみて欲しい…」

「イーピン、中華、みたい!」

「あはは…ありがとうございます…」


きゃらきゃらと、明るい女の子の笑顔に囲まれて嬉しい限りだ。贅沢だ。嬉しい、けれども耐性がなさすぎて戸惑って仕方がない私だった。

連れていかれたお洋服屋さんでは、それはもう着せ替え人形のごとくされるがままだった。女の子たちが私の服を見立ててくれると言ったまではよかったのだが、そうしているうちに段々盛り上がってしまったらしい。遂にはパーティードレスみたいのまで着せられそうになって、ようやく我に返った。

それでも気遣ってくれていることや、わいわいとこんな風に盛り上がれることは楽しくて仕方がないのだけれども。


「ごめんなさい、私のために皆さんに時間を取らせてしまって。でも、ありがとうございました。助かりました」


結局、数枚のお洋服を買っていただいてしまった。ビアンキさんに頭を下げると彼女は困ったように微笑む。


「謝るのはこっちの方よ。女の子がずっと休まず作業するのは、辛かったでしょう。もっと早く気づくべきだったわ」

「いえ、その点は私も仕事なので。それに、好きでやっている仕事だから」

「そう。それは素敵ね」


ビアンキさんの言葉に、私も大きく頷く。そう、好きでやっている。私は今の仕事に誇りを持っている。
ビアンキさんも、長いことマフィアに居る女性だと聞いていた。だからどこか通じる部分があるのかもしれない。彼女に認められるというのは、なんだか安心することだった。


「助手子さんは何のお仕事をしているんですか…?」

「技術者の助手なの。色々な機械や基地の整備をしてたのよ」

「助手子さん、メカくんのお姉さんなんですよね?姉弟で技術者なんですね!」

「はひ、凄いですー!」


クロームちゃん、京子ちゃん、ハルちゃんの裏のない笑顔がこそばゆい。本当は弟と並んで立てるほどの能力はないのだけれど、改めて言われると同じ土俵にたっているのだなあとしみじみしてしまう。


「ところで…」


ふと、ハルちゃんと京子ちゃんが顔を見合わせ、にやりとした。


「助手子さん、上司さんとラブロマンスだっていうのは本当なんですか?」


不意打ちの問いに、その内容を理解すると同時に熱が頬へと集中する。
…どこから私の情報、漏れているのだろう?


130920



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