頷かせればこちらのもの


ミルフィオーレでスパナの助手をしていた助手子がボンゴレの仲間へと加わることになった件は、記憶に新しい。
彼女の弟でありボンゴレメカニックであるメカとも和解したらしいし、これからまた賑やかになるのだろうと思っていた。というか、ここまでが綱吉の理解が及ぶ範疇だった。

(でも・・・これはちょっと考えてなかった・・・)

一体どうすれば、金髪の外国人が自分の部下に土下座をしているような事態が起こるというのか。
仁王立ちのメカと、土下座するスパナ。その異様な光景に、綱吉は頭を抱えた。




「お姉さんをウチにください」


事の発端は、スパナのその一言だった。
助手子とメカが話し合いから戻り、さて技術者も含めた作戦でも練ろうと思った矢先である。メローネ基地の跡地には、あれから不眠不休で作業を続けるスパナと正一が居る。そして、彼らの動向を見に来た綱吉とリボーンとフゥ太、今しがた話し合いから帰ってきたメカと助手子。

メカと助手子の打ち解けた、仲の良い姉弟の様子に綱吉はほっと息を吐いた。彼らが姉弟だと知ってから、少なからず心配だったのだ。
その時、例のスパナの発言が飛び出した。前触れもなくメカを呼び止めると、彼は丁寧に土下座したのだった。


「ちょ、ちょっとスパナ何をしているのよ?!」


焦って声を荒げたのは助手子だ。
顔を真っ赤にした彼女は、弟と恋人を交互に見つめながら土下座を止めさせようとした。しかし、逆にスパナに動きを抱きとめられ、宥められる。


「助手子、戦いが終わったら結婚しようと言っただろう。だから、許可を取っているんだ」

「だ・・・だからってまだ、落ち着いてはないじゃない・・・!」

「うん。まだ事態は終わってないから挙式はできないけど、無事ひとつ区切りはついただろう。ウチはすぐにでも助手子が欲しい。だから今のうちに、許可は欲しいんだ」


当然のごとく言ってのけるスパナに、助手子は言葉を失ったように黙り込む。仁王立ちのままそれを見ていたメカは、顔をしかめて恨みがましく呟いた。


「分かりやすいフラグ立てたくせに、生き残りやがって・・・」


婚約のことはメカも聞き及んでいた。というか、通信で全てだだ漏れだったのである。
姉をマフィアに引き込んだ男のプロポーズ現場に遭遇し、メカは素直にそれを受け入れられないらしい。シスコンと名高い彼だから、なおさらだ。

だがここで口を出したのは、第三者であった。


「話はわかった。でも簡単に、助手子さんを渡すわけにはいかないな」


驚いて顔をあげた面々の前にたっていたのは、なんとなく黒い笑みを浮かべたフゥ太だった。



130727



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