閑話:B5F主作戦室


メローネ基地襲撃の当初の目的は、全ての鍵を握っていると思われる入江正一を撃破することだった。その為に多くの犠牲を出しながらも、ボスは目的地である入江の研究所にたどり着いた。

しかし、蓋を開けてみれば。
入江正一は十年後のボスと裏で通じており、内密にミルフィオーレで動いていた、いわば協力者だったのだ。あまりに低い確率に賭けた十年後のボスと入江の計画。多くの人を危険に晒してまでそれを実行させた理由は、想像以上に絶望的な現状で。全てはミルフィオーレのボス、白蘭を止めるための布石。

辛うじて入江とボスの合流は成功、ザンザス率いるヴァリアーによるイタリアの主力戦も勝利を収めた。これでようやく勧める。そう思った矢先、白蘭からの直々に挑戦状が叩きつけられたのだ。

白蘭は副官である入江には知らせず、真六弔花という最強の守護者たちを隠し持っていた。ボンゴレなんて最早敵ではない、それでも“楽しませてくれたお礼”に対等な勝負の場を設けるという。

敗北ではないが、勝利とも言えない結末。立ちふさがる壁は大きく、まだ先は見えない。
――それでも確かに、状況は好転している。



「おかえりなさい、ボス。本当に皆良くやってくれた」


ボスたち、そして迎えに出ていた待機組の帰還を確認した俺はモニターから目を外す。満身創痍ではあるが、ちゃんと生きて帰ってきてくれた。それだけで目頭が熱くなる。ようやく、長い夜が明けたのだ。楽観視できる状況ではないが、まだ打開策はある。まだ負けていないと思えるだけ、今までとは違うのだ。


「その割に、メカは随分仏頂面だけれど?」


俺の独り言に返答。誰も居ないと思っていたので少し驚きながら振り向くと、フゥ太がこちらへ歩いてくるところだった。


「なんだ、まだボスたちと居ていいんだぞ。監視は俺がやっとくからさ」

「心づかいはありがたいけど、大丈夫。それより僕は君と話したくてね、メカ」


真剣な顔をした幼馴染は、探るように俺の名前を呼ぶ。そしてズバリ、本題を突いた。


「助手子さんのこと、どうするつもり?」


メローネ基地でボスを助けたスパナと共にボンゴレへとやってきた女。スパナ秘蔵の助手、ミルフィオーレの技術者である助手子。それは俺の姉だ。発覚した当初、どうしていいか分からずにただ頭に血が上った。しかし今になって冷静になり、その状況を皮肉に思う。
何が楽しくて、姉と弟で敵対していたというのだ。


「彼女はスパナや入江さんと一緒に、まだ向こうで作業している。僕も直接は会ってないけど・・・まずは君が、会うべきだと思う」


フゥ太とは付き合いが長い。そして彼は姉とも少なからず交流があった。
案じてくれているのだ。俺と姉との関係を。


「そろそろ、はっきりさせないといけねーよな」


向き合いたくない現実。
俺は重い腰を上げた。


130421



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