激戦


沢田綱吉とアイリス率いる死茎隊の戦闘は、苛烈を極めていた。スパナはその粉塵の中、手を止めることなく作業を続けている。
――この調整が終われば沢田綱吉の必殺技、イクスバーナーは完璧になる。それが唯一の、生き残る道だった。

アイリスは不意に綱吉から目を離し、スパナへと視線を向ける。手元の通信機。どうやら司令官から何か情報があったらしい。


「おや――スパナ、吉報だよ。あんたの最愛のアシスタントが正一に捕らえられたらしい」


ニタリ、と唇には厭らしい笑み。繰り出された言葉に一瞬、手が止まった。


「抵抗もせず、拘束を受け入れたそうだよ。残念だね、一人逃がそうとでもしていたんだろう」


しかし、すぐに指は動き出す。だがアイリスはその空白を見逃さなかった。やっぱり、と愉快げに笑い声をあげる。
助手子に対するスパナの溺愛っぷりは、ミルフィオーレ内ではすっかり知れ渡っている。アイリスはここでスパナを見つけた時、既にその仮説を立てていた。この非常事態に助手子が意図的に別行動なんて、考えられない。居ないのなら、逃がしたに違いないと。


「それにしても、なんであんなガキ臭い女がいいのかねぇ。子供も同然じゃないかい」


スパナは彼女が好きだから取り立てているわけではない。しかしアイリスこそ、その肉体の魅力でここまでのし上がってきた女である。


「正一も一時期、あの子に熱を上げてただろ?一度本人にも問い詰めてみたが、何一つ面白い反応は寄越さなくてねぇ」

「あんたに、助手子の魅力はわからないよ」


ずっと黙っていたスパナ、突然アイリスの言葉を遮るように言い放つ。だが依然として作業の手は休めず、顔も画面を凝視したままだ。


「助手子が正一に捕らえられたのは、吉報に違いないな」

「はァ?」

「これで、あんたたちをブチのめして正一の所へ辿りつけば、無事助手子と合流できる。そういう作戦だ」

「――ッ、できるもんならやってみなッ!機械弄る能しかないスパナの癖に、大きな口叩くんじゃないよッ!」


舌打ち混じりに鞭を振るう。

(作戦、など・・・はったりだろう)

が、言い切れないはスパナだからだ。いつも妙な作戦で敵も味方も混乱に招く。だから嫌なのだ、とアイリスは顔を歪めた。


130129



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