月は欠け、


ひとつ、弁明しなければならない。

入江正一。今回の標的であり、一連の事件の鍵を握っていると見られている男。目下対立中のミルフィオーレファミリーのナンバーツーで、まさに襲撃中のメローネ基地の指揮官。またつい先程判明したことであるが――俺の姉貴、助手子の上官でもあった。

入れ替わる前の大人獄寺さんが追っていたことから見ても、彼に辿り着き真実を明らかにすることが今回の最重要課題。そして彼の研究は。


「たしか時空間移動絡みの――いわゆる、タイムトラベル」


このような事実が明らかになった今、俺の持っている手札を全て明かさないわけにはいかなくなってしまった。






「・・・あのさ、俺ずっと黙ってたんだけど、入江正一とは古くからの知り合いなんだ」


おもむろに切り出す。え、と目を丸くしたのはその場の全員だ。


「どういうことだ?」


リボーンさんの言葉は、皆の疑いを代弁していた。それは、そうだ。この話はずっとしたくて、でもできなかったこと。


「簡単にいうと、昔馴染み。近所住まいだったのがきっかけで、年は離れていたけど良くしてもらってたんだ。気のいい、普通よりちょっと地味くらいな近所の兄ちゃんだ。ついでに、俺が技術者になったのも入江の影響」


良くある近所付きあい。当時の俺は、入江の指先に夢中になった。なんでも作れる、魔法のような技。それで、技術者の道に憧れた。


「中学高校も俺は入江と同じところで、OBとしてもかなり助けてもらってた。凄い技術者だ。高校を出た後はアメリカの大学に進んで――・・・最後に会ったのは、二年程前。暫く連絡の途絶えていた入江先輩からの誘いで、ロボット工学展に行った」

「・・・メカ、それって」


フゥ太が思わずといった風に口を挟む。


「そう、俺が研修終えて一時帰宅した時。で、姉貴はその後すぐに転職した。名前も聞いたことのない、イタリアに本部があるとかいう技術系会社に、な」


今、俺とフゥ太は確信に近い推測を立てている。
あれは、俺が正式にボンゴレ10代目直々の部下として雇用されるか否か、という頃である。昔世話になった入江先輩に、急に招かれてロボット工学展へ出掛けた。そしてその時、姉も同行したのである。

(それまでは確実に、姉貴とミルフィオーレに接点なんてなかった。でもあの時、入江先輩が来ていたってことは――)

直後の姉の転職。これは間違いなく、ミルフィオーレへの引き抜きだったのだろう。

(もしかして、俺がきっかけを作ってしまったのかもしれない)

そんな、脳裏に過ぎった最悪な推測を振り切るように続ける。


「――今はそれは置いておこう。姉貴がミルフィオーレの一員だってのは、もう変えられない事実だからな」


ひと息吐き、俺はぐるりと皆を見渡した。


「で。ここまでで質問あるか」


121101



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