協調


死ぬ気丸をうまく取り出せずにあたふたしていた綱吉は、ぎょっとして動きを止める。スパナが急に振り向いたからだった。探していた部品が見つかったらしい。

(やばっ)

逃げ出そうとしていたことがバレたかと、綱吉は硬直する。が、次にスパナが述べた言葉に間抜けな声を出してしまった。


「じゃあ、ハイパーモードになってよ」

「ええ!?」


見れば、スパナの横に立つ助手子も驚いた様子はなく、成り行きを見守っていた。


「実際やって試すから」

「えっいや・・・でも」

「遠慮しなくていいのよ」

「・・・・・・・・・ハイパーモードになったら、オレ、逃げちゃえると思うんですが・・・」


最後の方が尻すぼみになったのは、スパナと助手子があまりに呆れたような表情を浮かべていたからである。更に追い討ちをかけるように、綱吉を諭す言葉が続く。


「私たちが信用できないのもわかるけど・・・それ、綱吉くんにはオススメできないな」

「ウチの連中は強い。次は殺されるぞ」


現にスパナのモスカは綱吉を倒している。匣所持者でない彼に苦戦しているようでは、確かに危ない気がした。しかし、仲間のことを考えると居ても立ってもいられない。
けれど。


「二人の言うことも一理あるな」


突如として響いたその声は、悩む綱吉の頭を冷やすのには十分すぎるものだった。


「リボーン・・・?!」


居るはずのないその姿を見つけ、衝撃と安堵を感じる。混乱したまま現れたリボーンに向かって叫んだ。


「ホログラム・・・」


スパナの声にはっとして目を凝らす。その言葉通り、うっすらと透けていた。実は、綱吉のヘッドホンにはホログラムの投影機が仕込まれていたのである。今までは電波受信がうまくいかなかったらしいのが、急に波長が合うようになったのだとか。

とりあえず、相互の状況と今後の動きを確認する。別れた獄寺と山本らが二組に分断されてしまったこと。さっきの地震は地上では起こっていないこと。そして、綱吉は次の戦いに備えてスパナとイクスバーナーの完成を、急ぐこと。


「と、その前にだ。助手子だったな、ちょっと話いいか?」


ひと通り話が終わり、各々の行動に移るという時。リボーンが顔を向けたのは、今までただ相槌を打っていた助手子だった。その不意打ちに、彼女は目を瞬かせる。


「私ですか?」

「ああ。ボンゴレ随一のメカニックが、お前に物申したくてどうしようもねーんだ」

「技術者として半人前の私でよければ、いいですけれど」


(ボンゴレ随一のメカニック・・・?)

最初、ジャンニーニかと思った。だが彼は先程もスパナに食ってかかっていたし、わざわざ助手子を名指しすることはしないだろう。

(でも他にメカニックなんて・・・)

そこまで考えて、あっと思う。
もう一人、いた。そもそもジャンニーニは"発明家"。"メカニック"を名乗る、気さくなつなぎ姿の青年がいるではないか―――。


「・・・ミルフィオーレファミリーブラックスペルC級、助手子だな」


普段は温厚なその声は、びっくりする程冷えている。まるで別人のようだと綱吉は、息を飲んだ。


「俺の声に、心当たりはないか」


助手子が途端に目を丸くした。口元を抑えた手が、僅かに震える。
そしてその次の言葉は、その場を凍らせるのには十分なもので。


「姉貴、どうしてそこに居るんだ?」


二人の関係を、明確に示していた。



120731



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