なによりの幸せ


試合中、客席の後ろの方で一生懸命首を伸ばして、こちらを見ようとする彼女が気になった。
小柄な彼女の前に座った人たちは運悪く背が高かった。小さな彼女の身長ではその人たちに視界を遮られてしまうのだ。彼女はそんなの慣れっこなのか、器用に頭と頭の間から、一生懸命こっちを見ていた。


浜田さんの掛け声で「水谷」コールがかけられている。試合の、一番大切な場面だった。


はずしちゃだめだ

オレが打たなきゃ


極限のプレッシャーに落とされる。頭が真っ白になった。その時。



「ふみきー!しっかりぃ!!」



彼女の声が響いた。その声に一瞬、冷静になったオレはそのまま勢いよくバットを振った。

そして

白球は空高く飛んだ。




君の存在がなによりの幸せ




「ふみきお疲れ様!かっこよかったよ!」


試合終了後、
飛び跳ねるように満面の笑みでやってきた彼女を見て一気に緊張がとけたオレは、なりふり構わず彼女を抱きしめた。


「オレ、やったよ!」

「ふみき凄いね!」


彼女のまっすぐな言葉がなんだか照れくさくて、嬉しくて、オレは笑いながら「応援ありがとう」と伝えた。




1/4 Fumiki Mizutani
Happy Birthday!!
080126



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