大切なひと


勿論僕は群れるのが一番きらいだから、小動物のようにいつも後ろをついて歩く、幼なじみが嫌でたまらなかった。


「ひばりん、今日は良いお天気だね!」

「…」

「ねぇひばりん。今度海、連れて行ってよ。昔よく遊んだよね!」

「…」

「ね?ひばりん」

「あ、あの、委員ちょ」


あまりにうざったいから無視してたんだけど、途中、草壁が見かねて口を挟んだから殴っておいた。
それでも動ずることなく、優しく(?)草壁なんかにも絆創膏をあげていた。絆創膏でどうなるような軽い殴りかたしなかったけど。

この幼なじみは、昔から僕の側にいたせいで、僕に対して畏怖やら圧力やらを感じないらしい。というか、他の人の僕に対しての態度にまるで気付いていない。大物なのか、ただの馬鹿か。
(風紀委員など、ただの仲良しグループだと思っている節がある)

突き放したり、酷いことを言ってみたり、時には本気で泣かせたのに、僕の前から消えない彼女に、実はかなり閉口している。


「ねー、ひばりん。聞いてる?」

「…なに」

「あのね、昨日校長先生にね、ひばりんとはどういう関係なのか聞かれたの」


一瞬、なんだか胸が冷たくなった。彼女と僕との関係、そんなもの、幼なじみでしかない。
だが、彼女が僕をどう思っているのかは不明だったし、何故か聞く気にもなれなかったのも事実だ。
身体にぴん、と緊張が張り詰めた僕に気づきもせず、彼女は続きを口にした。


「校長先生がひばりんは危険だとか訳わからないこと言ったから、わたし、言ってやったの」

「…」

「恭弥は、わたしの大切な人です、って」


わたしの、大切な人。
あっけらかんと笑う彼女を手元に置いておきたいという妙な気分が湧いた。
多分これはあれだ、愛犬に愛着が湧くみたいな。


思いたったら吉日。
とりあえず、すぐに校長を絞めにいこう。そしてすぐに彼女を風紀委員に入れよう。

彼女がただの幼なじみから僕の犬へと昇進する資格は、僕を妙なあだ名ではなく恭弥と呼んだ、それだけで十分である。

ただ、僕は猫の方が好きだけどね。




大切なひと




5/5 happybirthday Kyouya Hibari !
080505



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