夕焼けチルドレン


すっかり日が暮れてしまった。夕焼けで赤く染まる世界は、まるで私を笑ってるかのようだった。むかつく。笑うな。

目が赤いのは、夕焼けのせいではなかった。あいつのせいだ。骸の。
骸と喧嘩するのは、これが初めてでもないし、私が泣いて飛び出すのもいつものことだ。
でも今回に限っては、私は全然悪くない。だから絶対謝ってやるものか。



徐々に人気が薄れて、誰もいなくなった公園のベンチに座る。

あぁ暗くなってくな。
夕日って切ないな。
寒くなるかな?
野宿、できるかな。

取り留めのないことを考えながら、ごろん、とベンチに寝転がる。
ふと携帯電話に手を伸ばすと、あらら、着信履歴30件。千種だ。きっと心配してるんだ。
でも出てやらない、悔しいから。



「もう私は戻らないもんね、精々貧乏揺すりしてろバカパイナポーめ」

「骸様は貧乏揺すりどころじゃなくて、犬に当たり散らしてるよ」

「…ちーくん」

「名前、帰ろう」


千種が、立っていた。


「でもでも、私帰らないんだもん」

「野宿、できるわけないでしょ」

「だって骸が悪いんだよ」

「知ってる。でも出てったきり戻らない名前も悪い」

「だっ、てぇ…」

「ほら、泣かない」


千種は優しく私の背中をとんとん、と叩いた。その暖かさに安堵して、我慢していた涙腺がゆるむ。


「さぁ、帰ろう」

「骸怒ってるよ」

「…怒ってないよ。名前を心配してた」


千種の後ろを歩く。夕日に、2つの長い影が伸びる。


「ちーくん、心配かけてごめん」


影を見ながらそう言った。すると、片方の影が、もう一方の手を掴んで言った。


「いいよ、名前の世話をやくのは好きだから」


自分より大きな手の暖かさにどきどきしながら、私も千種が迎えに来てくれるのなら、また家を飛び出そうかと考えていた。




夕焼けチルドレン




(10/26 柿本千種生誕)
081123



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