エスエムプレヰ *暴力表現注意 先週送りつけられた大量のチェンメ、そして深夜三分ごとのワン切りの履歴、極めつけに首筋に噛みつかれた痕を自慢気に友達に見せたら、彼女は真っ青になって「早く別れなよ」と言った。 確かにこの交際の仕方はおかしいのだと薄々感づいていたものの、何故か、彼と別れようとはこれっぽっちも考たことない。 「デートDVっていうんだって」 ぼそりと呟いたあたしに、数歩前を歩いていた彼、総悟はにやりと笑って振り向いた。 「俺と、別れる気にでもなったんですかィ」 腰に下げた刀をちらつかせながらいうもんだから、たちが悪い。 「俺、あんたに暴力なんて振ってねーよなァ」 「総悟くん、深夜にワン切りするのは世間では嫌がらせらしいよ」 「先月の不幸の手紙は送りきりやしたかィ?」 「無理だよ、五万人も友達いないよ」 総悟はくるりと向き直って、いきなりあたしの首を絞めた。 痛くはないが、しばらくすると酸素が足りなくなって頭が真っ白になる。そろそろ意識を手放すか手放さないかの寸前で、あたしの首は解放された。 「なに首絞められて嬉しそうにしてるんでィ。あァ、興醒め」 あたしの唇にやさしいキスが落とされた。総悟は、あたしに意地悪をした後は必ずやさしくしてくれる。総悟のあたしに対する意地悪は、子供が構って欲しくて泣き叫ぶようなもの。あたしの友達は少し誤解をしている。あたしたちはデートDVではないのだ。 「はっ、噛みつかれて首絞められて、嫌がらせまで受けてんのにデートDVじゃねーなんて、あんた本当にマゾですねィ」 先週の歯形に触れられ、くすぐったさに身を捩りながら首を横に振って否定した。 「マゾじゃない、あたしが総悟くんをあいしてるからだよ」 「愛、ねェ」 呆れたように言う総悟は今度はあたしの指に噛みつく。サディスティックな笑みに鼓動が高鳴った。 端から見ればデートDV。でも、あたしたちは幸せなのだ。需要と供給が見合っているこの関係はデートDVとはいわない。 「総悟、」 口を離した彼に、物足りなさそうに声をかけるあたしは結局極度のマゾである。 エスエムプレヰ (あなたになら、殺されても構わない) 080605 |