幼なじみと約束



「おおきくなったら、けっこんして!」
「じゃありおうがちゃんと、ゆびわぷれぜんとしてね?」
「うん約束する!」
「約束!」


……

ちっちゃいころにした約束なんて、忘れちゃってるくせに。あれから10年も経ったけど、オレと彼女の関係は何一つ変わってないし、それが嬉しくも悲しくもあったりする。ただ、あのころから変わったことといえば、オレの身長が伸びて漸く彼女とつりあうようになったということくらい。
家が近所で、小さいときから一緒だったあの子とオレは所謂幼馴染で、活発で明るい彼女にはよく泣かされたけど、たまにやさしくてそこそこ可愛い彼女にいつからか惹かれるようになってたのも事実で、でもこんなこと知られたら絶対兄貴に馬鹿にされる。

オレと兄貴が野球が好きだったから、彼女も自然に好きになっていたし、オレが兄貴の試合を見に行ってたから、当然彼女もついてきた。それはいかにうちと彼女の家が密接な関係だというかを表してもいるけど、そのオレと兄貴と彼女の関係が、今のオレの最大の悩みだったりする。


「りーおー、今日も呂佳くんいないの?」

「いないけど、そんなに気になる?」

「だって呂佳くんいないとつまんないー」


オレがいるじゃン!

そう思ったけど、否定されたらそれこそ立ち直れそうにないので黙っておく。そう、彼女は兄貴に夢中だった。いつからかわかんないけど、最近は兄貴の話ばっかするんだ。ほかの誰かだったらぼこぼこにしてでも彼女を奪い取ってみせるのに…兄貴じゃはっきりいって歯がたたないし。


「高校、りおーは美丞大受けるの?」

「…やめた」

「えー、なんで!そうすれば今年からも夏大、二人いっぺんに応援にいけるのに!」


応援っていっても兄ちゃんは試合でないし。オレも一年だから出れる可能性はかなり低いけど、それでも部員のオレがいる桐青と兄ちゃんがコーチしてる美丞大のどっちの応援かっていったら、普通オレの方応援しない?しかも彼女も桐青の生徒でしょ、仮にも。しかしその理屈は、彼女が本気で兄貴にほれてたら通用しないけど。


「じゃー、もしかぶったら兄ちゃんのほういくの?」


勇気を出して聞いてみたら、一歩後ろを歩いていた彼女が後ろから飛びついてきた。


「ばっか利央!あんたの応援いくに決まってんじゃん!」


その答えにオレはよっぽど間抜けな顔をしたのか、「なあにすねてるの利央」と彼女は笑った。


「べっつにー!どうせ今年も桐青が甲子園いくもんね!」


赤くなった顔と高鳴る心臓をごまかすように、オレは夕暮れの道を急いだ。

まだ、チャンスはあるみたい。




おさななじみと約束の事情



(あ、呂佳くんお帰り!ずっといなくて困ってたんだよ!)
(何だよどうせまた利央の話だろ)
(もしかして妬いてるー?)
(誰がおまえに妬くかよ。もううざいから早く告れ)
(だって利央ったら、あの約束すっかり忘れてるんだもん!)


中沢家ばんざい^^
080616



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