動けなくなったわたしを見て、豪炎寺は首を横に振った。「違う、疑っている訳じゃないんだ……訊き方が悪かった」 そしてわたしの両肩に手を置く。ボールも床に落ちて、転がった。凛々しい瞳がわたしを射抜く。


「俺はお前を信じるよ」


 視界の端で桐生の表情がゆがんだのが見て取れた。円堂もわたしを見てにかっと笑う。


「綿貫はそんなことする奴じゃないさ」


 底抜けに明るい声が頭に響いた。頭痛がする。頭痛がする。風丸が桐生と対峙している。桐生を睨んでいる。


「人間違いじゃないか?確かなことなのか?会話の内容とか聞いたのかよ、不用意にそんなこと言って、綿貫が無実だったらとか考えなかったのかよ」


 ああそんなに言い過ぎてはいけない、だめですよ、と風丸を咎めようとしたけれど、やはり身体は動かない。桐生の、作り物のように美しい顔が、悲しみと怒りと劣等感とその他諸々汚い表情に染まるのが見えた。いけない、大勢で責めるような真似をしてはいけない。しかしか細く情けない声しか出なかった。


「だめです……桐生さんは悪くない」
「まーだ桐生をかばうわけ?いい加減にしたら?もう十分痛い目見たでしょ」


 マックスが冷めた目でわたしを見ていた。力なく首を横に振る。


「綿貫、他人を守るのも大切だけどさ、その……お前自身だって同じくらい大切にしないと」


 半田がつっかえつっかえに言った。


 頭痛がする。頭痛がする。どうあがいても悪い方にしか物事は進まないようで、ああ面倒くさいもうどうにでもなってしまえと思考を放棄した。転落するなら落ちるところまで落ちてしまえ。すべてを手放す開放感には抗いがたく、荷物も持たずに部室から飛び出した。






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