唐突だが、帝国戦が終わった後、である。
 あの試合について語りたいことは特にない。それよりも今は、目の前でつらそうにしている豪炎寺が問題だ。妹を裏切ってしまったという罪悪感と、やっぱりサッカーをしたいという気持ちの間で揺れて、彼は泣き出しそうになっている。すべて、わたしに語ってくれた。洗いざらい、吐き出してくれた。


「俺の妹は、サッカーのせいで、今も眠っている」


 夕暮れの教室で、わたしは豪炎寺につかまった。部活のことは、木野さんも居るし、そろそろ音無春奈も入部する時期だろうし、大丈夫だろう。わたし一人が休んだところでさしたる支障もあるまい。橙色に染まった彼の表情は、見ているだけのわたしもつらく苦しくなってしまう。


「俺は、どう、したら……」


 わたしはどこまで介入していいのだろう。余計な口出し、とは、どこからのことをそう言うのだろう。こんなにも悩んでいる少年を、わたしは助けることも、支えることもできない。こうして頼ってもらっているのに、この歯がゆさといったら。


「わたしは、そうですねえ」


 豪炎寺がわたしをじっと見つめた。わたしの言葉を待っている。


「あなたの正しいと思うことをしたらいいと思います」


 素直に、向こうで視聴していたときから思っていたことを言ってみた。結果として物語はそのように進んでいくのだから、わたしの発言に問題はないはず。


「まだ中学生なんだからしたいことをするのもアリだと思いますし、その逆もまた然り。責任を感じるなら自分なりの方法で償うなり何なり、あなたの思うベストな選択をすべきではないかと」


 わたしから選択の強制はしない。背中を押すこともしない。あくまで、道に気付かせるだけ。その上で彼は、自分の意思で進む道を決めるのだ。


「お前は、少し冷めているな」


 それが厭味や皮肉でないことは、彼の表情から窺えた。「なんとでも」肩をすくめてそう言うと、やっと豪炎寺が笑った。「老けてる」なんとでも言ったらよろしい、君が正しい道を進んでくれるのならわたしに心配事はないのです。









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