わたしは跡部がいないと生きていけない。きっと。わたしが何よりも欲するのは地に足をつけているとはっきり認識しているときのような安心感で、それを持っているのは跡部で、それを与えてくれるのが跡部だから。わたしにだけ優しくしてくれなんて言わない、他の女と関わるななんて思わない、ただ彼がくれる優しさにくるまって、甘えるだけ。

「大丈夫だ」

 それでも彼の言葉が、いつにも増して優しいから。

「大丈夫かなあ」
「俺様が大丈夫だっつってんだから大丈夫に決まってる」

 見上げなくても分かる、わたしを抱きしめながら彼は、優しく微笑みながらのドヤ顔というアクロバティックな表情をしているのだろう。見なくても分かる、それが、安心。
 わたしが欲しいのはなんだろう。愛なのか、これは。彼に訊いてみれば「俺様は愛してるつもりだぜ」と言うのできっとそうなのだろう。彼の言う事を信じていればたいがいのことはだいじょうぶ。これはわたしが経験して知ったこと。
 大丈夫そんなこともある、俺は絶対にお前の味方だからな、お前が何をやったって収まるモンは収まるし、安心しろ、収まらないモンでも俺が収めてやる。
 いつだったろうか。そう言った彼は、間違いなく、わたしが求めてやまないものを持っていた。彼はわたしを恋人にしたいと言った。わたしはそれを呑んで、安心と引き換えに恋人になった。そんな関係、愛がない?なんとでも言えばいい。わたしはわたしなりに彼を好いているつもりだし、不安に揺れるわたしを抱きしめて引き止めて膝に乗せて甘やかしてくれる彼の腕の中は、わたしの部屋のおきにいりの毛布に並ぶほどに居心地がいい。

 わたしが求めてやまなかったものは、わたしを傷つけるもので溢れている世界の中で、いつだってくるんでつつんであたためて庇ってくれる、わたしだけの毛布だったのである。







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