唐突な告白ですが聞いてください。まあそう嫌な顔をせずに。つまらなくもなければ面白くもない、色恋沙汰が好きな年頃の人間ならば好んで聞きたがるような内容のお話だから。わたし実は、男の人が苦手だったんだ、背の高い人なんて特に。……悲しそうな顔をするのね、嬉しい。サドだなんで言わないでよ、後輩に懐かれて嫌がる先輩なんてそうそう居ないわ。わたしもそういう一般的な先輩なの。……意外って顔、やめて。いくら図太いわたしでも傷つきます。


 そうそう、背の高い男性が苦手だったの、なんだか威圧感を感じてしまって。けれど、それがね、克服できたの、君も知ってるでしょ?君と同じバスケ部の二年生、木吉鉄平くん。彼、とても背が高くて、加えてガタイもよくて、わたし、彼のことがとても苦手だったの。言いつけるだなんて痛くも痒くもないわ、だって彼もそのことを知っているもの。だから言ったでしょ、苦手「だった」って。今は全然平気よ、君だって全然怖くない。ぜんぶぜんぶ木吉くんのお陰よ。


 初めてしゃべったのは確か遠足のときだったかしら、そう、だから結構序盤で知り合ったの。高校でも遠足なんて行くのか、なんて田舎くさい驚きとともに、バスでの席決めでくじを引いたら、ベタだけど、木吉くんの隣になっちゃったのね。それでわたし、怖くなっちゃって、遠足も休んじゃおうかって、こら、笑わないで、わたしも真剣だったんだから。真剣に悩んでたの、隣の席があんなに背の高い、大きい男の人で、どうしようって。木吉くんったらやっぱり優しい人だから、くじ引きの後でわたしのところに来て、「席隣だな、綿貫、よろしく」だなんてわざわざあいさつして。そのときのわたしといったらまだまだ臆病で馬鹿だったから、目もあわせないで頷くだけ。木吉くんはそれでも気を悪くせずに、わたしと仲良くなろうとしてくれた。なんていい人なのかしら、今思い出しても涙が出そう。……言い過ぎた、流石に涙は出ないわね。


 遠足の当日、友達に引きずられて集合場所まで来て、みんなより頭ひとつ分大きい木吉くんを見て、どうしてかわたし、いつもみたいに怯えなかったの。なぜだかわかる?わたしを見つけたとたんに、子供みたいに嬉しそうに笑ったのよ、きっと彼もわたしの男性恐怖症もどきを知っていたからでしょうね、でも彼ったら上手で、来てくれて嬉しいとか、そういう直接的なことは言わずにね、「俺、結構おしゃべりなんだ、眠りたかったら言ってくれよ」って。わたしそのセリフを聞いて、あれ、見た目に似合わず優しげな人だなあって思ったの。思えばわたしは彼のかたちしか見ていなかった気がするわ、だって彼っていつもにこにこしてるじゃない?それなのに優しいことに気付かないなんて、ほんと、わたしってばよっぽどの鈍感だったのね。


 それで、どうしたんすか、ですって?そりゃあ、ずうっとおしゃべりよ。最初こそ相槌だけだったんだけど、段々、彼が普通じゃないって気が付いて。それが気になって気になって、探っていくうちに、どんどん彼の面白さに惹かれていったの。周りの子たちにはひやかされたけど、わたし、あの日のバスのおかげで、君ともこうして普通におしゃべりできるのよ、火神くん。



「青子、今日、一緒に帰らないか?委員会で遅くなるんだろう?」



 青子先輩は木吉先輩の声に振り向き、可愛らしい声で「うん、待ってる!」と答えた。もう一度俺の方に向き直ったとき、青子先輩は幸せそうに笑っていた。







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