美しい人間というのは何をしても美しい。眠そうに目を細める黄瀬くんは、モデルをやっているだけあって、睡魔に負けかけて覇気も元気も感じさせないだるそうな表情すら、綺麗なのだ。


「眠そうね」


 頬杖をつきながら目だけこちらにむけて、ん、とぼんやりした返事を返す黄瀬くんはやっぱり綺麗だった。


「部活?」
「いや、そうじゃないんス、昨映画観ちゃって……」


 くあ、と欠伸をひとつ。かわいそうになあ、放課後は部活があるし、授業はまだまだ終わらない。体調不良だとでも嘘をついて保健室で寝ればいいのに。そう言うと、彼は首を横に振った。


「それは、ちょっと、やりたくないっていうか」
「真面目だなあ。わたしなんてすぐ寝ちゃうけど」
「そうっスよね。青子ちゃん、よく寝てる。英語の時なんて特に」


 ぎょっとして彼の顔をまじまじと見つめる。相変わらずぼんやりした目をしていた。いつもとはかけ離れてぼうっとして、それでいて何か、わたしの隙を見つけてしまいそうな鋭さを持った、不思議な感じ。


「俺、青子ちゃんばっかり見てるから、なあ」


 睡眠と覚醒の間で彷徨う意識の中なのか、まだ眠たそうな声で、とんでもないことを言ってのけた。あんまり驚いたので聞き返すこともできずに、また机に突っ伏して寝始める彼と、これからどうして接すればいいのか、わからなくて途方にくれた。







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