目が焼けるように熱かった。眼球がひりひり痛む。瞼を閉じると熱が篭るようで、余計に辛かった。


「青子、充血してるぞ」
「うそ」
「ほんと。日焼けしたんじゃねえ?」


 綱海が心配そうにわたしの目を覗き込んだ。ガタイの割りに黒目勝ちで猫のような愛らしい眼がじっと赤らんだわたしの眼を見つめる。息苦しかった。


「目って日焼けすんの?」
「ひりひりするだろ。炎天下に出ると焼けるぜ」


 だから俺、海に行くときは必ずゴーグル掛けるんだ、と。なるほどただのファッションではなかったのか。髪型・髪色に加えあのゴーグルは、なかなかにインパクトのある出で立ちだったので、エキセントリックな特徴のひとつに理由が見つかってなんとなく安心した。


「目薬貸してやるよ、ちょっとはマシになるだろ」
「あ、うん、ありがと」


 結構がさつな奴だと思っていたので、物持ちのよさに驚いた。女子のわたしでも持っていないのに、なんだか不思議だ。それともわたしががさつなだけか。綱海がドライアイとかだったらなんか面白い。そんでもって、想像とはいえ人の不幸をネタに面白がるわたしは悪魔である。


「日焼けなんて、一体いつしたんだ?」


 確かに昨日は部活がなかった。日差しも強くなってきたこのごろ、ずっと外で活動するサッカー部のメンバーの疲労は尋常でなく、先生が見かねて休日をくれたのだ。みんなは心身ともに休めるべく家で過ごしたり久々に遊んだりと思い思いに過ごしたらしい。わたしはというと、サッカー部のマネージャーの癖にインドア派なので、普段ならばこんな休日は家で本を読むか寝るか、あるいは出かけるならば古本屋に行くか、くらいの過ごし方しかしない。しかしわたしは変わった。綱海に出会ってからのわたしは、外出を面倒くさがらないようになった。


「綱海を見てたの」
「俺?」


 きょとんと首を傾げる彼に、素直に告白する。


「昨日、綱海、サーフィンしてたでしょ。天気がよかったから海にでも行こうと思ったら、綱海がいたから。なんとなく、ぼーっと、見てた」


 目薬を片手に暫く目を瞬かせていた綱海は、にんまり笑うと、嬉しそうに入れ物の蓋に手を遣った。


「え、ちょっと」
「俺が注してやる!」
「なにそれこわい」


 口ではそういいながらも、大人しく綱海を見上げて片目を閉じた。充血したわたしの眼を、綱海のつり目がじっと見つめる。今度は息苦しさを感じなかった。




――――――

おめでとうございます






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