※一応高校生




俺の家、なう。綿貫は文庫本片手にりんごジュースを飲んでいる。俺はそれを見るともなしに視線をやって、はたと気付いた。
綿貫の口は赤い。口というか、唇。紅をつけているわけでもないだろうに、どうしてだか、真っ赤なのだ。それがまた、どこかせくしいというか、その、色っぽく感じられることがあるのだ。


「なに見てんのやらしー」


ふが、となんとも情けない声を漏らしてしまった。綿貫は俺の頬をぎりりと抓りあげると、ちゅっと俺の鼻にキスを落とした。かわいいやつ。


「まんぞく?」
「まだ、もっと」


ぎゅっと抱きしめたら綿貫はくすぐったそうに身をよじった。綿貫はじゃれているつもりらしいが、以下略。言うのはずい。


「ん、ちょっと、くらま、」
「は、綿貫、」


首筋に擦り寄って甘噛みして舐めてみたら、ぺちんと叩かれた。見てみたら、綿貫は顔を真っ赤にして怒っていた。


「やめてよ、こういうの、はずい」
「やめない」


ちゅっちゅっと口と口をくっつける。それだけのことなのにふわふわする、な。なんでかな。ほそっこい綿貫の脚を撫でて、背中に腕をまわして抱きしめた。綿貫の片手に握られていた文庫本が、ばさりと落ちる。結構力を入れていたのか、表紙がくしゃりと曲がっていた。焦ってたのか。かわいいな。


「ね、倉間、もうおしまい。わたし本読みたいよ」
「だめ。なあ、お前が本読んでたら、俺さびしいんだけど」
「やだ今日の倉間はやけに素直だね」
「じゃ、ごほうびに、ちゅーして」


再び擦り寄ったら、キスではなく、抱きしめられた。ぎゅうぎゅうと、隙間なくひっつきたいとでも言わんばかりに。


「なあ綿貫、ちゅーがいい」
「なんで今日の倉間はそんなに素直なの・・・いつもツンツンなくせに・・・」
「ちゅーしろよ」
「命令かよ可愛くねえ・・・嘘、やっぱ可愛い」


可愛いなんていわれても嬉しくないんだけどな。でも綿貫からの褒め言葉だと思えば、嫌でもないかもしれない。皺のついた紙製のブックカバーを撫で、綿貫の手の届かないところに本を押しやった。






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