つまらない。死ぬほどつまらない。
 俺のかわいいかわいい彼女が、子猫にうつつを抜かしている。部活で忙しい彼氏様の久々のオフだというのになんてことだ。事前に事情を話されては、いた。確かに、「ごめんなさい、今、ちょっと事情で外出できないんです。おうちデートになるし、しかも子猫につきっきりになりますけど、大丈夫ですか?」と。でもまさか、ここまで「つきっきり」とは思わないだろう、誰だって。
 午前中はお母さんが、午後はなまえがその子猫の面倒を見ているのだそうだ。遊びたい盛りのようで、少し、それこそなまえがお茶を取りに立った一瞬の隙に、ティッシュを箱からわさわさ出して遊び始めるほど、目が離せない(取り残された俺がその子猫を捕獲するのにどれだけ苦労したことか!)。その経験から痛感したものの、俺の目の前でもう一時間以上も子猫と遊んでいる彼女に、不満を抱かないはずがない。エコひもの先っちょを結んだだけのオモチャでじゃらして遊ぶ彼女に、文句をぶつける。


「なまえ。つまんないんだけど」
「あっごめんなさい」


 心底、申し訳ない、という表情を浮かべて、エコひもを俺に渡すなまえ。ちがう、ちがうんだ、そうじゃない。ひもをじっと見つめて歯噛みする。なんてかわいいんだ俺の彼女は。ひもの先っちょに飛びついてきた子猫を、仕方なくじゃらすことにする。


「うふふ、及川さんのこと、好きみたいですね」


 ひもじゃなくて俺の腕によじのぼってきた子猫を見て、なまえがころころと笑う。腕から肩へと移動する子猫を、どう扱えばいいのか分からなくて、少しかがんで「なまえ」と助けを求めた。楽しそうに笑って、なまえが子猫を抱き上げた。爪立ててないだろうな、子猫め。
 いとしそうに子猫をだっこするなまえの姿に、妄想が膨らんでしまった。もし俺となまえが結婚したとして、なまえはきっと、こうやって子供をあやすんだろう。ちょっとだけ幸せな気持ちになった。




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