* novel | ナノ
 ばかーんでどしーんでずどーん。なんか怖い効果音があちらこちらから聞こえた気がするがいつものことだ、請求書は理事長にでも渡せばどうにでもなる。煩い最中(さなか)にこうして優美に紅茶が飲めるのも会長様と一緒にいられるからであろう。ここ最近マリモのせいで二人きりなんてまず有り得なかったし。適当に鞄から書類を取り出してひぃふぅみぃ数えてから請求代を書いて後から全部持って行こうと思案する。ああ、だるい。出来るだけ今日は一緒にいたいから明日でもいいだろうか。俺の太腿を枕にして寝不足を解消する会長の髪を梳いて俺らしくもなく微笑んだ

「…ん、ん…? さいと、う」
「あ。起こしちゃいました?」
「……別にいい」

 舌足らずさが残ったまま微睡みそうな瞳で俺を写す。ぽわーんとした感じがまた可愛いんだな、これが。口元がにやついてしまうのも今だけは良しとしよう、風紀委員たるものポーカーフェイスが〜なんてのを忘れてしまうほど今の俺は緩みっぱなしのはず。普段はあんなに男前なのに寝ぼけると幼いふぞりできゅんきゅんする。いつも通りツンケンしてんのも絶妙だが様々な表情に俺の株はどんどん急上昇するのだ。そのうち愛が溢れる気がする。

「お前また仕事してたのかよ」
「ええ、まぁ。会長が寝ている間にも凶暴化したマリモは町を破壊してるんでね」
「ふはっ、んだそれ。子供向けのアニメみてえ」

 うわー、俺の心臓ずっきゅんどっきゅん言ってるよ。どうしよう不整脈でぶっ倒れそう。こんなに幸せそうに笑う会長を見逃したくないからそんなヘマはしないがそんだけ俺は彼のことを愛してるってことだよ。ついうっかり先ほど会長の髪をいじくっていた手で前髪をどかし額にちゅうっとしてやれば頬を赤くしたがふにゃりと綻ぶ会長の周りに花が見えた
 そんな俺らを邪魔するかのように魔の手が伸びる。まりもが俺らの居場所を突き止めたのか会長の名を呼んで突進してくるのだ、野生の感って恐ろしいね

「甘楽ッ 勝手にサボったらだめなんだぞ!ほら、俺も一緒に謝ってやるから…ってお前ら男同士で何やってんだよ!」
「何って、そりゃあ。ねえ」
「ナニだろ、見たまんまを信じろよ。悲しいやつだな」

 ハン、と鼻で笑う会長はブラックモードで、俺を脱がせとか言うから来る前にシャツのボタンを一つ一つ丁寧に脱がしてくと案の定喚いた新種のマリモ猿。だからこれはお芝居であって校舎の死角裏でにゃんにゃんするわけじゃないが、ほんとに頂こうかな

「うわぁあああぁあっお前らホモだったのかよ!?キモチワルイ!キモチワルイキモチワルイ!」
「てめぇのがよっぽど気色悪ぃんだよ、ここで常識が通用するとでも思ってんじゃねえだろうな」
「っひ、か、甘楽! う、嘘だよな、嘘なら今すぐ着替えて…」
「嘘じゃないから俺が脱がそうとしてんの分かんない? まあ着衣プレイもそそるけど甘楽先輩が男前すぎて嫌がるんだよね。ってことで君は人を侮辱した刑によってしょっぴくよ?」
「なん…で…、」
「んー、可哀想だからアドバイスやるよ。キモチ悪かったら見てないで保健所行った方が勝ちじゃない?」

 きっと保健室の先生が隅々まで診てくれるだろうから。ギッと睨んだ顔は憎悪に嫉妬に悔しさ。マリモは発情期のメス猿と同様なのか、へえ。会長を見れば泣き出しそうになって走っていなくなったマリモにげらげら笑う会長、ストレスが爆発したら人ってこうなるのかな

「あー、あほらし。俺は誑したつもりはねえぜ?」
「フェロモンだけでも落ちちゃうんだよ、俺みたいに」
「ふうん、お前は俺の外見だけで落ちたのか。へえ、ほーう?」
「ちょっとちょっと、勝手に怒んないでくださいよ。あなたのことは全部愛してますよ、会長様」
「…フン、第三ボタンまでしか指は動いてないらしいし信じてやるよ」
「会長がGOサイン出したら押し倒しますけど」
「俺の部屋まで我慢してろっての」

 唇を掠めて起立した会長は豪快にカップに入っていた紅茶を飲み干してほら、と差し伸べてくる手に掴まり埃を払い落として散らかした菓子類をポケットに突っ込めば風紀のくせにだらしないと説教されてしまった




ハローハロー、マイハニー!
(酷くしても許してね、一時でも甘い時間を壊した代償は重いってこと味合わせてやる)



title by:ネジと心臓
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