* novel | ナノ
 俺、平良日凪(たいらひなぎ)。16歳、高等部一年の春ではなくて梅雨だな、もう。そろそろ高校生にも慣れました
俺の通う高校というか学園の名前は雨之杜(あめのもり)学園。大人数を誇る金持ち高で、偏差値も日本一高いそうだ。外部から来る輩はこの学園に受かれば将来は多望だからというが一年に一度しか無い試験に受かる者は少ない。そしてこの学園は10人居れば9人は美形だというから困ったものだ。あ、あと、もう一人は平凡とか。俺のことだな。イヤミだよ、もちろん。中身も外見も、平凡。それが俺。なのにこの学園にいるのは物心つく前からここで育てられたからで、親が金持ちなのかなんなのかいつ口座を見ても有り得んくらい金が入ってる。まぁ俺は母さんも父さんも見たことはないのだけれどそんな陰気な話しをしたって1日は進まない。まずは朝飯からだろ

「 ハートの始業 」

「ひーなちゃん。いい加減起きろって。俺腹減ったあ」
「んん、あと一時間と少し…」
「俺待たないよ?つうか何んだよ少しって!わざとらしすぎるよひなちゃん」

ベッドサイドにぎしりと重みが増える。たぶん同室の親友が座ったんだろう。
 昔はさらさらとしたきれいな黒髪だったのに今は見事な琥珀色で、金色の瞳。まぁこれはカラーコンタクトだろうけど腰パンと盛った髪辺りがチャラ男っぽい、そんな幼なじみ。起きてるっちゃ起きてるけどやっぱこいつが起こしてくんないと始まらない朝がある

「わかったわかった、ぎゅー」
「わっ、違うってば。朝なのー」

上半身を起こして抱きしめてやればもー、とかなんとか言っといて満更でもなさそうに腕のなかできゃっきゃきゃっきゃ言ってる。かわいい。俺は平凡だけど幼いころからこの学園にいるから、男も恋愛対象だったりする。たまに外に行って女の子と遊ぶときもあるけど、こうやって素直にじゃれてくるのは嫌いじゃない
「ひなちゃん、俺ひなちゃんのこと好き」
「俺もお前のこと好きだよ」
「じゃあ、ちゅうしよ」
「いや」
「えー」

だからと言ってこいつを恋愛対象にしたくはない。出来るだけ、親友の位置でありたい。それは俺のワガママだろうか。
むくれる頬をさすり髪を撫でれば機嫌が直ったのか、まだ着替えてすらいない俺に早く早くと急かしてくる。そういうとこは昔から変わってないから、なんとなく安心するんだよなぁ

「ユウ、お手」
「ワン!って俺わんこじゃないしっ」
「はは、ジョーダンジョーダン」

 …いい子だね、お前は。
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