* novel | ナノ
涼介(りょうすけ)×理月(りつき)

 最近慌ただしい毎日を過ごしてる。暇よりか幾分かマシだけど仕事をしてるのがおれ一人だけとなると些か疲労が溜まってきてると申しますか。生徒会の仕事を延々と繰り返す毎日を文句言わずこなしてたりするんだよね、褒めてくれてもいいんだよ。んまぁ、不満はあるよね。だって以前まで下半身万歳だったんだもんそれなりに溜まってたりする。風紀の誰かさんはこの機会に自重しとけって言うしさー、

(でも実際そんな時間ないんだよなー)

 重たい書類の上に顎を乗せて溜め息を吐きながら歩く。どうしたもんかな、そもそもなんでおれだけこんなことになってんだろ。イマドキじゃなくてケナゲになりかけてると思うのは自惚れ? だけどこうやって散歩するのも楽しいし前よりは安らかに癒されてはいるし一石二鳥かなぁ

それに……

「おれ今恋しちゃってるしー!きゃーっ」
「おいおい、どんだけ女子のノリなんすか」
「!? だ、だれぇー?」

 聞かなくてもわかるんだけど、さ。好きな人の声くらい耳に焼き付けるほど覚えてる。後ろを向けば、ほら。困ったように笑う自分では地味と称した顔付きと黒い瞳がおれを写してくれている。それだけできゅんとした可笑しな高鳴りが心の中で響いた
「俺のこと忘れちゃうほど仕事に熱心だったんですか? ねえ、理月センパイ」
「あ、う。忘れてないし!」
「なんだっていいんですがね。ほら、恋のお祝いに持ってあげますよ」

 柔らかい声音で告げる祝辞が、がくんとおれの心を揺さぶる。だって好きな人に祝われるなんて可笑しな話しはおれのなかだけで紡がれておけばいい。好きだけでへこたれたりきゅんきゅんしたりおれって忙しいヤツ

「…じゃあ、半分だけお願いしていーい?」
「全部くださいよ。おれだって暇なのが紛れるし、ギブアンドテークですよ」

 ふは、っと穏やかな笑い声でおれを促して持っていた書類をすべて奪うと頭ひとつ分の距離を埋めるように額へ唇を寄せて頬を撫でれば勝ち誇った表情でおれを見つめた

「…なにに喜怒哀楽してるか俺には知りませんけど、その気持ち、いつか聞かせてくださいね」

 その時の涼介の顔は、とてつもなくあっさりしていて、どれもこれも今の状況に合ってない言語ばかりが思い浮かぶだけの時間は過ぎていく




優しさがまぶしくて
(呼吸がままならない……っ)
(まったく、可愛い人だなぁ)



title by:休息
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