* novel | ナノ
 ガリっと鈍い音がする。
 ついにシャープペン自体が折れてしまったことに会長は分かり易く顔を歪めて折れたそれを放り投げた午前中のこと、ふざけたランキングで作成された生徒会メンバーはおらず、会長である篠田当麻 (しのだとうま)だけがこの場を切り盛りしていた。それもこれも全ての元凶は理事長の甥だという季節はずれの編入生なわけだが、副会長を始め役員たちや風紀委員のメンツ、ましてやあの学園一の不良と呼ばれた男が外見不潔、中身自己中心的空気の読めない大馬鹿者として認識した小井川純恋(こいかわすみれ)にベタボレだからだ。
 それでも当麻はどんな理由があろうとも興味が持てず、逆に自分も恋には順応であるから編入生に盲目的な感情なんて抱けるはずがない。必然的に一人で生徒会を遣り繰りするをすることになったのは疲れとストレスが溜まる一方で、全く同じ環境に陥った恋人が気になって仕方ない。重苦しい溜め息を吐き、同時に控えめなノックが鳴ると、いちいち騒がしい編入生ではないことに安堵しながら入れと告げる

「失礼します、委員長どもが全く役に立たないんで代わりに書類を持ってきました」

笑みとともに唇をわざとらしくなぞると面白いくらいにかっと眦を赤くした会長に満足したのかくすりと息を吐くと立ち直り書類を渡す

「小井川学園高等部入学式についての書類です。数件ほど事件がありましたので報告書ですね、判をくださいましたら俺が理事長の元に届けます」
「ああ分かった。…っなあ、祐人、少し時間をくれ」
「この書類に対して?それとも――」
「お前との時間に決まってるだろ。…キス、したい」
「…少しだけの休息、って言わなきゃ。そろそろ食事も取らなきゃね、仮眠室行きましょうよ。食堂からテイクアウトさせて持ってこさせるからね?」
「ん、分かったから早くしろ」

 困ったような呆れを含む表情で祐人は肩を竦め苦々しい笑みをしながら誤魔化しつつ携帯を取り出た。通話相手に適当な名称を告げて電話を切り、立とうとする当麻を軽々しく抱あげた。拗ねたようにあり得ないと呟いて目元を覆い隠すのを知らぬ顔で頬にちゅっとリップノイズを響かせ、仮眠室へ移動しようと足を動かす

「大事な大事な俺だけのオヒメサマ。お願いがあるんだけどいい?」
「…ヒモな願いは聞かないからな」
「え、俺ヒモじゃないし。リコール手続きを申請して欲しいなあ? 風紀も生徒会も俺らだけでやっていけるって分かったからね」
「分かった。望みは無いって判断した、ってことでいいんだろ?」
「うん、遅くなって悪い。ただ最近、生徒会役員たちとうちの馬鹿たちに話してみたんだけどさぁやっぱり聞かなかったんだよね。もうダメかなって。判断ミスだったよ、ごめん」
 ふん、と鼻先で認めたように笑いを帯びたかと思えば顔を見合わせ唇を舐めるその色情的な状況に苦笑した。





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