早く早く
頭が痛くて目が覚めた。今は何時だろうかと時計を確認すれば針は午前3時を指していた。
なんだかひどく身体が重くて起き上がる気にもなれず、もう一度微睡む。
夢の中に落ちそうになった時、誰かが私を呼んだ。
「なまえ…!なまえ〜っ」
揺さぶられて覚醒する。ああ頭が痛い。
「良かった、なまえ起きた!すごく苦しそうだから、なまえ、しんじゃうかと思ってボク怖かったよ〜っ」
そう言って瞳を潤ませる目の前の宇宙人は、普段の私なら抱き締めていたところだが如何せん身体を起こすこともできない。心配させてごめんね、と声を出したら、予想以上にガラガラでちょっと笑った。
「なまえ、ボクどうしたらいい?なまえ、苦しそう。どうしたら治るかな?」
「冷えピタ、と、水、風邪薬…」
ガラガラ声を絞り出してそう吐き出せば、ハルは「わかった!」と言って飛び出していった。
あ、行っちゃった…
風邪をひくと人肌が恋しくなるなんていうけど、今まさにそれかもしれない。ハルが出て行った途端に寂しさが込み上げて、なんだか泣きそうになった。
「ハル…」
声に出して名前を呼べば、いっそう寂しくなって、涙が出そうになる。
ハル、早く帰ってきて。私が泣く前に。
「ハル………」
「ただいま!」
涙が溢れてしまいそうになった時、聞きたかった声がして。私はやっぱり泣いてしまって。
「ボク、よくわからなかったからケイトに聞いて持ってきたよ…ってどうしたの!?なまえ、どこか痛い?泣かないで…」
そう言うとハルは優しく私の頭を撫でて、「なまえが元気になりますよーに!」なんて言って冷えピタを貼ってくれた。
「…ありがと、ハル」
「どういたしまして!なまえが悲しいとボクも悲しいから。早く治るようにおまじないだよ!」
「〜っハルーーーー!」
「うわあ!なまえ泣かないで!ご、ごめんねボク、変なことした?」
「ち、ちが、その、嬉しくて…」
止まらない涙を拭いながら話せば、ハルは笑ってくれた。それから何かを思い出すように目線を上にあげた。
「あ、そうだ、風邪薬飲んで。あと…」
「あと?」
「飲んでから!」
「わかった。」
あまり美味しいとは言えない薬を飲み下すと、ハルが嬉しそうに私にキスを落として。
「な、にやってるのハル!?移るよ!?」
「夏樹がさっき言ってた。キスすると1番早く治るんだって。」
「〜〜〜〜っ」
だから早く治るよ、なんて最高の笑顔で言われたら、夏樹への暴言も忘れて私は布団に潜り込むしかできなかった。
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