04
「寿一くん…」
「どうしたなまえ、好きなように見学していいんだぞ」
「あの、その…私、先輩方の名前知らないなぁって…」
「………。」
一瞬の沈黙。
「そうだったな、お前達にばかり自己紹介をさせてしまった。すまない」
「ちょ、謝らないでよ寿一くん!後でしてもらえたらそれでいいから…」
相変わらず寿一くんは真面目だなぁ。まあそこが寿一くんの良いところなんだけどね。
「しばらくしたら休憩を入れる。そしたら改めて自己紹介をしてもらおう。だが、3年のみだ」
「いや、3年生だけで充分だよ!全員の自己紹介なんてしてたら部活終わっちゃうでしょ?」
「…そうだな、他の部員は正式に入部したら紹介することにする」
少し考え込む素振りを見せたあと、三十分したら休憩にするからそれまで見学していろ、と言われ、とりあえず見にいってみることにした。
「あ、きたきた福富さん。主将さんと話してるから声かけようか迷って先に行っちゃった。ごめんね」
そこにはぼんやりと練習を見学する真波くんがいて、私の姿を見つけると楽しそうに手を振った。
「私こそ勝手に話し込んでてごめんね。先輩方の練習どんな感じ?」
「うーん…やっぱり王者なだけあってスゴいのかな?よくわかんないや。でも見てたら俺も走りたくなっちゃった」
えへへ、と真波くんは笑う。
それからは軽くお話しながら先輩方の練習を見学していたら、三十分なんてあっという間に経ってしまった。
「よし、休憩にするぞ」
「「「「はい!!!!!」」」」
寿一くんの一声でまわりがてきぱきと動いていく。これでやっと3年生の皆さんの名前が分かるんだ。
これから私がマネージャーとして彼らをサポートできたらいいな。そう思いながら私は先輩方が来るのを体育座りで待っていた。
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