知ってる、だから嫌い。

私は梓にとってただの友達でしかなくて。

優しそうに先輩を見つめる、梓の瞳の中に映ることはもうないんだと改めて実感する。

こんな現実(せかい)、壊れちゃえばいいのに。



月子先輩に恋愛相談を持ちかけられたのは先月だったっけ。

「梓くんが好きなの。」

そう言った月子先輩の瞳には梓しかいなくて、本当に梓が好きなんだと思った。

「名前ちゃん、梓くんと仲良いでしょ?だからよかったら協力してもらえないかなぁー…なんて。」

そういって綺麗に口端をあげる先輩を見てこんな人に叶うはずない。
そう実感した。

もちろん先輩が悪い訳じゃない。

自分の気持ちを言えなかった私が悪い訳であって。

「はい、もちろん協力しますよ。」

そう言った私は梓を避けて過ごした。


「ねえ、名前。 何で僕のこと避けてるの?」

ある日生徒会室の翼に会いに行く途中ばったり梓にあってしまって問いつめられることになった。

「別に…。避けてなんかないよ?」

「ここ数週間、避けてられてるようにしか見えなかったんだけど?」

そう言う梓の顔は悲しそうに歪んでいて、つい口から嫌みがこぼれた。

「そういうのはさ、私じゃなくて月子先輩にいいなよ。」

「何で夜久先輩が出てきてっ…。」

「だってそうじゃん。私に構ってる暇があるなら先輩のところに行きなよ、好きなんじゃないの?」

「そうだけどっ…」

「私、梓のこと嫌いだよ。」


そう言った後に見た梓の顔が今も忘れられなくて、
梓のこと本当はすきだったよなんて言えるわけなくて、


一人、深い悲しみに溺れた。


<知ってる、だから嫌い。>

(さようなら私の大好きな人、)

(もう二度と関わりません。)

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