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ようやく書き上げた日誌を職員室に持っていって、教室に帰ってきた私は、視界の隅に違和感を感じて首を傾げた。
「あれ、何か光った?」
私が座る席の1つ前、さっきまで優衣が座っていた席の机の中で点滅する光を見つけて、手を伸ばす。
「これ……優衣のケータイ、だよね」
確認した時計は電車の発車時刻をだいぶ過ぎていて、優衣が気付かずにバイトに行ってしまったことを知る。届けなきゃ、優衣ぜったい困ってる。私は急いで帰り支度を整えると、次の電車に乗るために走って駅に向かった。
『ごめんね美奈、わざわざありがと!』
優衣のバイト先の飲食店まで無事にケータイを届けた私は、気を付けてね、と心配してくれる優衣に見送られて1人で帰っていた。日が傾いてきたせいか、いつも賑やかな通りが今日は珍しくあまり人が居ない。そういえば、と思って辺りを見渡した。悠に偶然会えたのは、確かこの辺りだったな。何であの時、助けてくれたんだろう。
「なあ、こいつじゃね、この前の女!」
今まで何となく避けていた場所。また悠に会いたいって気持ちと、もし出会って、彼女と一緒に居たらどうしようって気持ちの間に、ぐらぐら揺れてぼんやり歩いていたら、急に目の前に壁が出来た。
「ちょっと、俺らと一緒に来て欲しいんだけど」
何か企んでるみたいな笑いを含んだ声が、私の目の前に立ちはだかった壁から落ちてくる。見上げて確認するよりも早く、口を塞がれて、ごめんねーなんて言って笑いながら何かを押し付けられた瞬間、身体中に電流が走ってそのまま私は意識を失った。
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