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「美奈、どしたの何かあった?」
次の日、泣き明かしたせいで腫れた目を隠したくて俯きがちに登校したら、教室に入った途端一瞬で優衣にばれた。
「優衣…、」
どんなに泣いても、忘れられなかった。一晩分の涙は、私の中で10年も燻っている想いを洗い流すにはまだまだ全然足りないみたいだった。
「おいで、こっちで話そう」
教室の端の優衣の席まで連れていかれて、座んなよって椅子を引かれた。
「ありがとう」
「良いよそんなの。話せる?」
優衣は、私が話せるようになるまでゆっくり待ってくれた。私は昨日あったことを全部話して、優衣は黙って聞いてくれた。
「美奈、」
頭を撫でられる感触が気持ち良くて、私は目を閉じる。優衣に話せて良かった、少し気持ちが軽くなった。
「N高のゆうって、美奈の幼馴染みだったんだ」
「そう、みたい」
「でも、だったら何で名前変えてるんだろうね」
言われて、確かにそうだなと思った。昨日はもう頭の中がぐちゃぐちゃで、なんとも思わなかったけど。
「あたし、そのはるかって人、美奈のこと忘れてないと思うなぁ」
だってほんとに忘れてたら、美奈のこと助けたりしないでしょ、と優衣が笑った。優衣は、すごい。私もこんな風になりたいって本気で思う。優衣が居てくれるだけで、私はこんなに救われている。
「そう、だと良いな……」
「よっし、やっと笑った」
強張っていた頬が緩く綻ぶのを感じて、私はまた少し泣いた。昨日の傷が、ちょっとだけ小さくなった気がして、嬉しかった。
「泣き虫だなぁ、ほら泣き止め!」
泣き笑いして多分すっごく変な顔になってる私を見て、優衣は呆れたみたいに笑いながら頬をうにうにと摘んでくる。
「うにゅ、放してー」
楽しそうに笑う優衣に釣られて、私も笑った。少し元気が出た。
「私、まだ諦められないかもしれない」
「うん、良いんじゃない。応援するよ」
優衣のその言葉は力強い。私はもう一度ありがとうと言って、目を細めた。
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