つらぬく鉛


*流血表現アリ


「ザンザス…ッ」

呼ばれた名前に振り向いた瞬間視界が銀に染まって、突き飛ばされるのと同時に聞き慣れた爆発音。


グラリと目の前で傾いだ身体が、ゆっくりとスローモーションで地に堕ちる。

その様を見ながら、まるで出来すぎた安い映画のようだと嫌に冴えた頭でそう思った。


「ボスッ」


誰のものか分からない悲鳴が呼ぶ呼称は己のものであって、そうと分かっているのに体が動かない。
駆け寄る金髪の、額に乗ったティアラでさえ朱を散らして、地に伏した細い銀にまとわりつくそれがリアルを帯びた。


ガクリ、膝をつけば生ぬるい液体が染み込んで、力の入らない両の手でようやっとつたない息を繰り返す彼を抱きあげる。



「しく、ちまったぁ…」

荒い息の中で呟いた声が掠れて。

「しゃべんじゃねぇッ」

回した腕を伝って下へ落下していく液体が足元に広がっていくのに、全身が総毛立つ。


敵の笑い声と、部下の怒号とがない交ぜになって響く。
それをどこか遠くに聞きながら、低い体温を必死に抱き締めた。


「震え、てるぜぇ…ボスさんよぉ」
微かに口角をあげて。


黒い隊服を濡らすそれを止めようと脇腹に押し付けた指の間から、彼の生までも溢れ落ちていく気がして、えも言われぬ恐怖と憤怒と吐き気とが同時に込み上げてきた。


「何で庇った…ッ」


怪訝そうに眉をひそめる。

「決ま…てんだろぉ、?」



後ろに、敵の倒れる音を聞いた。

「愛してるぜぇ、ザンザス」



end.

ちょっとボスッ、スクちゃん病院連れて行くわよ!

ししっ
こんな傷いつものことじゃん

…お前だって狼狽えていただろう

てめッ、黙ってろよムッツリ!





ヴァリアー一家は今日も平和。



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