「あ、あの・・っ私、ユリウスが好きなの・・!」
顔を真っ赤にして視線を俯かせてそう告げてきた女の子に
今週はよく告白されるなんて思うのはやはり失礼なのだろうか。
その言葉を聞いて真っ先に頭に浮かんだのは<first>で、
数日前のその様子とはまるで違う女の子を見下ろした。
「えっと・・ごめん俺、そういうのよく分からなくて」
今までにもこうやって告白されたことは何度かあったが
戸惑うばかりでどうしたらいいのか分からない。
というより、名前も思い出せない子にそんなこと言われてもちょっと困るというのが本音だ。
女の子は一言謝ってから足早に俺の前からいなくなる。
その後姿を眺めてみても終ぞその子の名前は思い出せなかった。
「ごめんユリウス! ちょっと話が長引いちゃって・・!」
不意に名を呼ばれて振り返る。
するとさっきまでヴァニア先生に用事があると言って職員室に行った<first>が帰って来た。
「ううん、全然大丈夫」
まぁ待ってる間に女の子が告白して来たからなんてことはもちろん言えないが
気にしてないのは事実だ。
「なんかヴァニア先生のところに質問しに行くたびに疑問が増える気がする・・」
「あ、それ分かるかも」
複雑な顔をする<first>に相槌を打ちながらも頭ではまた別のことを考えていた。
あの時、<first>は顔を赤らめることもなければ緊張したように口ごもることもなかった。
俺に恋愛の一般なんてものはわからないが、本当に<first>は俺のことが好きなのだろうか。
だとしたら何故、こうして俺と話をしていられる?
「ねぇ<first>」
名前を呼ぶと<first>は振り向く。
俺が言おうとしていることなどまるで予想していないかのように、
口元に小さな笑みを浮かべて首を傾げる。
「あー・・いや、何でもない」
俺の気持ちを聞かないのは無かったことにしたいのか、
それとも本当は好きなんかじゃなくて言ってみただけとか。
最後の可能性に一瞬胸が詰まったことの理由すら、俺にはわからなかった。



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