あの後、いつまで経っても帰ってこない俺を心配したマシューが俺を探しに来たことで 話はうやむやになってしまった。 それでも<first>は変わらずに俺の隣を歩いている。 その横顔にいつもと違った様子はなく、 話す内容も今日の授業のことなど他愛ないものばかりだ。 何のつもりで<first>があんなことを言ったのかはいくら俺でもわかっている。 だからもし俺が<first>のことを好きなら自分も好きだと告げて付き合うんだろうし、 そうでないならごめんと謝ればいい話だ。 しかし理論だけわかっていても仕方ない。 その肝心の俺の気持ちをいくら胸の内に問い掛けてみても、 明確な答えはひとつとして返ってこないのだから。 「ユリウス?」 隣にあった<first>の顔が不意に目の前に瞬間移動する。 「っぅえ!?」 整った顔が至近距離で俺を見つめる。 俺が一歩前に進んだら触れてしまいそうな距離に、心臓はびくんと跳ね上がった。 「な、なな何?」 正直話を聞いていなかったために何がどうなって<first>が俺に接近してるのかがわからない。 心臓が激しく鼓動して頭に血を送っている。 何もかも破裂しそうだった。 「昨日の魔法生物学で出た課題終わった?って聞いたんだけど」 しかし平然とした口調でそう答える<first>に俺はハッと我に返る。 何だ、ただ反応がなかった俺の顔を覗き込んだだけなのか。 一瞬妙なことを考えた頭を深呼吸で落ち着かせる。 「また何か考え事してたの?」 怒るわけでもなく首を傾げる<first>に謝って、そんなところだと返した。 君のことを考えたなんて言ったら<first>は一体どんな顔をするんだろう―――って、だめだ。 一向にまともに働かない頭をぶんぶんと左右に振る。 俺は一体、何をどうしたいんだろう。 |