01



天然・・というか、とろいとよく言われる。
それが小さい時からコンプレックスだった。
二つ上の兄は勉強もスポーツも出来て、責任感もあって皆から頼られている。
それに比べて僕は勉強だけは頑張って何とかしたが、生まれついた運動音痴と胆の小ささは何ともならない。
今だって、僕は恥ずかしい失敗をした。
「彩子ちゃ―――」
ガタガタッッ・・ゴンッ!
一つ目は机に足を引っ掛けた音、二つ目は転んで手を付こうと思ったらおでこをまず付いてしまった音だ。
「あんた・・大丈夫?」
頭上から僕と同じバスケ部のマネージャー、彩子ちゃんの声が振ってくる。
のっそりと起き上がってチカチカする視界で彩子ちゃんを見つけた。
「だ、大丈夫じゃ、ないかも」
クラス中の注目を受け、隣に立つ親友、惣間なんて遠慮なしに大爆笑している。
ただ彩子ちゃんに今日の部活のことを聞こうとしたのに、ちょっと近寄ろうとしただけでこんな有り様だ。
「そういえば、さ。ほら。
 三井 寿とかいう人がバスケ部に入ったって言ってたじゃん。
 もう来てるのかなー・・って」
起き上がりながら聞くと彩子ちゃんは心配そうに僕を見上げている。
隣から煩い笑い声は未だ聞こえ、惣間の腕をばしっと叩いた。
さて、三井 寿と言う人はこの湘北高校でも有名な不良だった。
バスケ部である宮城 リョータに怪我をさせて入院させたという、バスケ部にしてみれば憎き相手であることは間違いない。
・・・まぁリョータにも生意気な部分はあるが。
そしてまた先週、体育館で部員に怪我を負わせる事件があったというのに三井がバスケを挫折して不良になったことや本当はバスケ部に戻りたいと切に思っていることなどから、安西先生が入部を許可してしまったのだ。
小心者の僕としてはそんな怖い人が部に入ってくるのは好ましくない。
先週はたまたま家の事情で、その現場には居なかったけど。
「えぇ、そうよ。まぁ何だかんだ悪い人じゃないみたいだしね」
その人の仲間に彩子ちゃんだって頬を叩かれたというのに、何て強いんだろう。
飄々と言ってのけた彩子ちゃんには頭が上がらなかったりする。
「そ、っか」
「残念だったな<名字>。お前怖がってたのになー」
笑いが治まったと思ったら今度は憎まれ口を叩いて来た。
「うるさいっ!」
がっと惣間の脛を蹴り付けようとする。
しかし片足を上げたことでバランスを崩し、いつの間にかもう片方の足まで地を離れていた。
「危ねっ・・!」
痛いくらいの力で腕を掴まれ、僕の体は惣間の右手によって支えられていた。
「あんた本当に運動音痴ねー」
それを見て彩子ちゃんは呆れたように息を漏らした。
あぁ、あぁ・・情けない。
僕だって本当はバスケ部で一緒にプレイがしたかった。
けどドリブル出来ないしシュート入らないしパスもちゃんと取れないし、体力ないし足遅いし・・・・言ってて悲しくなってきた。
それでもマネージャーとしてバスケ部にいるのはやっぱりバスケが好きだから。
小さい頃にお兄ちゃんがやっているのを見て憧れを覚えた時から、ずっと。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り皆がばらばらと席に着き始める。
惣間に礼を言おうと思ったがまたからかわれたので、つい言い損なってしまった。
それからの授業中、ちらちらと頭に三井 寿の名が浮かんでは消えていた。


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