-01side主-

今日真田が日直であるという情報を精市から聞いて、
僕は生徒が教室から出る頃を見計らい真田の教室を訪れた。
教室には真田しか居らず、自分の席に着いて学級日誌らしきものを書いている。
「あれ、部活は?」
いかにも今気付いたかのように廊下からそう声を掛ける。
すると真田は机の上に落としていた視線を上げ、僕を見た。
それだけでどくりと心拍数が上がる。
「<名字>か・・今日は日直でな」
小学校に上がった時からの仲であるにもかかわらず、未だに真田は僕を苗字で呼ぶ。
だから僕も真田の事を名前で呼ぶことが出来ずにいるのだ。
「ここ座っても良い?」
真田の一つ前の席を示して尋ねると真田は表情を変えぬまま
別に構わないと素っ気なく答えた。
真田が自分に気があることに気付いたのはもう随分昔の話だ。
何が切欠ということはないが、堅物の真田が僕に関して時折人間らしいところを見せた。
それでも告白なんてそんな怖いことは出来なかった。
自分がどれほど真田を好きであるのか僕はもう充分過ぎるほどわかっていたのだ。
運動部の声がグラウンドから聞こえてくる。
真田の持つシャーペンの音すらこの閑静な教室に響いた。
何よりも煩かったのは僕の心臓だ。
そんな中で初めて好きだと告げた言葉に、真田は驚くことさえしなかった。
「何故、謝る」
告げる前に侘びたことについて問う真田の表情はいつものそれだ。
「だって、ほら・・気持ち悪いだろ?」
いつ目の前が暗くなってもおかしくなかった。
息が上手く吸えない。
頭がくらくらする。
鼓動が痛いほど跳ねて今にも死んでしまいそうだ。
しかし僕は真田に拒まれたとして自分がもう生きていくことが出来ないことを、
きっと何処かで知っていた。
揺れる視界の中で真田の口が開く。
告げられたその言葉をこの鈍い脳はなかなか理解してはくれなかった。
「――え?」
こんな時ですら無表情であるこの堅物の男を、僕はとてもとても愛していた。



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